入りたい。
入れてくれ。
頼む。
この丸めたゴミが一発で部屋の角のゴミ箱に入ったら、受かる。
家に帰る途中の信号が全部青だったら、受かる。
・・・
こんな願掛けをいくつもしながら、一次選考(SPI)の結果を待った。
・・・
3日ほどすると、電話がなり二次選考に進めることになった。
この先、いくつ選考が待ち受けているのか。。。
頼む、二次もパスさせてくれ。
二次選考では、H田専務、O田さん、T本さんの3名が面接して下さった。
根掘り葉掘り色々な事を1時間ぐらい聞かれた。
もう、全部吐き出してダメだったら、どうにでもなれ。
「なぜ、ウチを受けようと思ったの?」
「御社の事業内容の地域活性業というのがとても気になりまして」
「ほほう、地域活性になぜ興味があるの?」
「私は大学時代、福岡に住んでいたのですが、4年ぶりに帰ってきて、
広島という街の元気のなさに愕然としました。
もう一度、福岡に戻ろうかとも思ったんですけど、長男ですし、
最終的には広島に帰ってこなきゃいけない事を考えると、
なんとか、この広島という街に元気になってもらうしかないんです。
少しでも、そのためになるような仕事だったら、尚良いと思いました」
「なるほどねぇ。君の思う地域活性ってどんなことなの?」
「はい。正直イメージが湧かなかったんですが、都市開発をしたり、政治にかかわる事かと。
で、まず市役所や県庁に行って、働くイメージが湧くか確かめてみましたが、
自分自身の力も付いていませんし、正直、働いている人たちも元気に見えなかったので、
ここはちょっと違うなと感じました。
政治に関わるとしたら、議員になる事が必要なんでしょうけども、
たしか僕の年齢では当選するのはまだ難しいのではないかと思いました。
だから、選挙に当選するだけの“何か”を掴む前に議員を目指す事もないかと」
「へ~。君、情報が街を活性化するってどう思う?」
「へ?」
「私たちリクルートは何も造ってないんだよ、こうなれば良いって主張もしないしね。
でも、例えば広島で働きたいって人に、求人情報を届ける、それで人が動くとか、
家を買いたい、探してるって人に、物件情報を届けて、引っ越した結果、広島に住むとか、
今日、明日、外食をしようとした時に、素敵なお店を紹介する。
そんな一つ一つを積み上げていく事で、人が動く。人は動くと元気になる。
元気な人が集まった会社が元気になり、そんな集合である地域が活性化する。
そういう仕事を、日々、営業という仕事を通じてやっているんだよ。
こういうのが、私たちの考える地域活性なんだけど、どう思うかね」
「・・・凄いっす。感動しました」
「でも、日常の100の仕事の内、99はキツイ、大変な、誰も羨ましがらない仕事だよ。
もしかしたら、100全部がそうかもしれない。それでも大丈夫か?」
「良いっス!(全然聞いてない)」
「寝る間もなく、高い目標を追いかけ続けて、まだ働いて、その繰り返しかもしれんよ」
「問題ないっス!(ぜーんぜん聞いてない)」
「ところで、君は1日いくらあったら暮らせるのかね?」
「通勤する交通費や昼飯代もありますから・・・、3000円ぐらいですかね」
「ぷぷっ、そうじゃない、最低限って意味じゃなく、日給の話だ」
「いや、わかんないっすけど、工事現場のときは8000円ぐらいでした」
「はっはっは、そうか、もういいよ。1万円にしよう」
「え?いいんすか?(スーツ着て、こんなに綺麗な仕事なのに)」
「まぁ、やってみなさい。みんなに紹介しよう」
「宜しくお願いします!」
「ちなみにいつから働けるんだね?」
「今からでも大丈夫です!」
「さすがにそれはないだろ(笑)、明日9時に来れるかね?」
「ハイ!!」
・・・こうやって、入りたくてしょうがない、中四国リクルート企画への入社が、
1997年7月4日に決まった。
もしかしたら、帰り道、スキップしてたかもしれん。
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ちなみに、Vol28はここ から。