・・・工場の状況を報告する現場責任者とのやりとり




「幸いにもけが人はありません。

このまま復旧に時間がかかれば、損失はひろがると思います。
あと数時間復旧できなかった場合、最大で10億近いものになります。

大至急、稼動に向けて動いていますが・・・」




「そうか、わかった。」


「で、現場の様子はどうなんだ?」


「・・・今、お伝えしたとおりですが」


「違う、そういうことを言ってるんじゃない!
 現場が意気消沈しているのか、互いに責任のなすりあいをしているのか、
 おろおろ慌てふためいているのか。そういう事を聞いてるんだ!」




「・・・申し訳ありません。」




「そういうことだったら、そのどれでもありません。」


「ラインが止まっても出来る作業にライン担当が数名移り、作業を急ピッチで続けています。
 修復係は専門の業者の到着までに、詳細を報告できるよう点検をしています。
 早番であがるはずだった社員も全員残して、手伝っている状態です。」



「そうか、わかった。」



「じゃぁ、いつも工場に出入りしてくれている弁当屋に電話して、
 大至急、人数分握り飯を作るよう手配してくれ。弁当代はワシが払う」



「は?」



「早くしろ!全員徹夜で遅れを取り戻さにゃいかんだろ。
 頑張れば、2ヶ月ぐらいで帳尻が合わせられるはずだ。

 お前は戻ってそのまま作業を続けるよう指示を出せ。

 それから、現場に言っておけ。一切罰則はナシだと。」



「はい!かしこまりました!!」



・・・



事実と現実は違う。



事実は、現場でアクシデントが起きてラインが止まった。損失も出そう。
それは誰が見たって一緒だと思うんだよな。



でも、その時に現場がどうなっているのか。


経営者はそれを見て判断しなきゃいけないんだ。



責任のなすりあいをしているようだったら、何十億の損失が出たって関係ないんだよ。
その双方を呼びつけて、殴り飛ばさなきゃいかんだろ。



意気消沈しているんだったら、現場にすっ飛んでいって励まさなきゃいかん。



慌てふためいてるんだったら、陣頭指揮をとりに行かなきゃいかん。



でも、既に現場が熱をもって復旧に取り組んでいる。
誰の責任でもない、これは俺ら全員の責任だと思って事にあたっているんだったら、
ワシの出る幕じゃぁないんだよ。



事実はあくまで事実。



でも、常に現実はどうなのか。

ワシらの仕事は現実を扱う仕事だからね。



この会社に入社した時から、そんな豪傑がいっぱいおったもんだよ。
最近ではワシもちょっとは近いことが出来るようになったんかなと思うがね。





この話をお聞きした時にはさすがに震えがきた。


すげぇ経営者に会えた。


こんな経営者にならなきゃいかん。


そう強く思ったのでした。




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では、またテキトー2