8月に入り、結束力という名目でいけば、全国でも有数のチームになっていた(はずだ)。
当時、おいらが所属した部門には、全国で22のチームが存在していた。
業績でいけば、中の上。業績でもなんとか華がほしいところだ。
ある月曜日の朝、意気揚々と出社すると、N島が引きつった顔で報告をしてきた。
「Namizo-さん、M(チームのメンバーM子)が出社してないんです」
あぁ、遅れてるだけじゃないの?と思った。
「いえ、8時からのロープレに無断欠席してますし、連絡もつかないんです」
ほっほー。そういうこともあるのね。
「何か兆候はあったの?」と聞くと、なにやら中々業績が出せない日々が続き、
入社当時は相当高かった自信は、いまや地下に潜ってしまいそうなほど下がっているらしく、
これから引き続きRで働く気持ちになれないと、日曜日の夜、
別部署の同期に打ち明けていたのだという。
そうそう、Rでは多少自信過剰なぐらいが丁度いい。
いちいち事あるごとにショゲていたのでは、体がいくつあったってもたない。
しょうがない。
起こってしまったことはしかたない。
電話してみよう。
うん。自宅(同居)にも、いない。
電話は、そこに置き去りだそうだ。
チームのメンバーの何人かは、とても深刻に考えているようだった。
しかし、不思議と強烈な不安を感じることはなかった。
彼がどんな人物なのか、たった2ヶ月ではあるが、飽きるほど感じる機会があったから。
そう、島根、である。
島根での研修で、彼のことをみんなで共有し、
一言で言うと彼にはどんなキャッチフレーズが相応しいか、という話になった。
彼だけでなく、参加メンバーには全員、キャッチフレーズが贈られた。
ちなみに、おいらのキャッチフレーズは、「一番」とか「勝利」とか、
二転三転した挙句、「成長」だった。
Mのキャッチフレーズ(彼を表すのに相応しい言葉)、それは、
「宇宙」
だった。
宇宙って。。。
と、その場に居合わせた全員が思ったに違いないが、それ以外も無かった。
そんな宇宙のMがプチ家出をしようが、電話という文明機器を放棄しようが、
いきなり会社の経費でチャリ(自転車)を買おうが、何もビックリすることはない。
それが彼なのである。
たしかに、事前の何の相談もなく、自転車を買ったという経費申請を見たときには、
一瞬目の前が真っ暗になったあと真っ白になって、
これは多分何かの間違いだろうと必死に目をそむけたりもしてみた。
でも、事実だった。
おもろいことしてくれるやないかい。
これは、きっとふくしま
に続く、おいらの人に対するキャパシティを広げるための、
神様の策略に違いない、きっとそうだ。それ以外のなにものでもないはずだ。
そう思うことにした。
今回は、文明機器の放棄&プチ家出&無断欠勤である。
きっといるさ、その辺に。
そう思えてしょうがなかった。
火曜日になっても、連絡はつかなかった。
水曜日になっても、連絡はつかなかった。
もしかして、そろそろ心配したほうがいいのかも、と思った。
木曜日になって、普通に席に座っていた。
彼は、やはり「宇宙」だった。
我々の理解の限界の相当上のほうで生きているに違いない。
そのあと、おいらの厳しい取調べを受けることになるのであった。
つづく。。。