最近では夢にまでAL氏が登場するようになってきた。これはよくないよ、まったく以て本当によくない。そうした差し迫った理由から自我を夢想の世界を忘れて現実に立ち返るべく紀行記を挟むことにする。…ねえ、こんなに虚しさ募る日記のはじまりってある!?

 

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この書き出しから信用を取り戻せる自信はまるでないけれど、私にとって山梨県は懐かしくも思い出深い土地なんだ。はじめて取材で訪れてからこちら何度も夫と2人で足繁く通った場所でもある。今回は我が子を連れて家族3人で来られたことが言いようもなくうれしかった

 

今回はじめて泊まった河口湖を臨む貸別荘。これまで泊まりつけてたのがレジャーホテルだったので、そこへ我が子を帯同する訳には行かなくて…それを残念に思った事実を忘れるほどに素晴らしい滞在になったよ。今後はここを常宿とすることにした

 

目と鼻の先にある「河口湖 音楽と森の美術館」へ。その敷地内に足を一歩踏み入れた瞬間からおとぎの国へ迷い込んだような佇まいに思わず歩みが止まってしまった。これはシャクナゲかな。いや、どうも違うようだ。とんと花に詳しくないんだよね

 

こうして入口まで続くポーチには何種類もの花が植えられ、やや距離があるもののそれを感じさせることなく五感を楽しませてくれる。この花はプルメリアに似た何か、わずかに赤味掛かった清廉さを感じさせる花弁がこの雰囲気によく似合う

 

この施設内の至るところに世界的に貴重なオルゴールの数々が所蔵されているとのこと。それらの中でも1920年前後に製作されたダンスオルガンは40体を超える人形たちが音楽に合わせて楽器を奏でるように動く仕組み。これが約100年前のものだなんて!

 

数あるオルゴールが奏でる曲の中には無論のことクラシック、その中にはバレエ音楽も。そうした由縁からバレエ衣裳の展示も、これは『眠れる森の美女』の第3幕よりオーロラ姫と王子の婚礼の場に登場するものであるとの但し書きが添えられている

 

こちらも同出典から。この作品ではオーロラ姫が眠りに就いてから本当に100年の時が流れているんだよね。そうして本来なら出会うはずのなかった王子と巡り合う。本来なら知らずに行きていくはずだったオルガンと邂逅できるなんて他生の縁を感じるよ

 

先述のダンスオルガンは踊り場の人々を楽しませたゆえに、そう呼び称されるのだそう。このカフェオルガンも文字どおりカフェやレストランの食事客の舌を弾ませ会話を和ませたのだろうね。この楽隊長さんはどんな音色を聴かせてくれるんだろう?

 

あのシュルレアリスムの大家として知られるサルバドール・ダリ製作による『レースをまとったサイ』。昨今ほかの施設がそうであるように、ここも外国人観光客が多く、特にこのブロンズ像の前で皆様カメラを構えていらしたようだ。なるほど、ふむ…

 

さまざまなコンサートがあらゆる場所で行われる施設内、これはカリヨン広場噴水ショー。いつも東京ディズニーシーや後楽園で目にする趣きのものだからと高をくくっていたのに、しっかり感動させられた。私がチョロいんじゃない、ここが素敵なだけ

 

これは「手廻しオルゴール」だと係員の方が仰っていたような気がする。「なにかお聴きになりたい曲はありますか?」と訊かれて「私の心は貴方の声に開く」をリクエストしたもののなかったので、これに。最初に一度回すだけでレコードみたいに聴ける

 

この美術館の名物司会者であるピエール石澤さんによる解説で数あるオルゴールを楽しむことができるコンサートホールは重厚な印象を感じさせる本格的な設え。その日ごとに異なるオペラ歌手が登場してアリアを聴かせてくれるとあって会場は大盛況

 

同コンサートホールを彩るシャンデリアもあえて時代を偲ばせるような意匠を称えていたことからホスピタリティに心を打たれ、つい写真に収めてしまった。夫から「そんなに気に入った?」って訊かれたけど…ううん、手の届かないものは欲しがらない
 

この後サンドアートと生演奏によるおとぎ話を題材にしたコンサートも観賞。結構な前方席に座したゆえ撮影を控えたため自前の画像や動画はなし。「代わりに」と言うにはあまりに見応えバッチリの公式チャンネルによるプロモーション映像をどうぞ

 

私達が伺った日の物語は『ヘンゼルとグレーテル』、私にとって同作ははじめて踊った長編バレエかつはじめて出演したオペラでもある。そんな思い出深い作品にここでこうして出会えるとはね。「だから旅って素敵なんだ」と言うよりも、こんな気持ちに気付くために芸術ってものは存在するのかも知れないな

 

ここを堪能し切ってから富士急ハイランドへも足を延ばした。ああした場所を制する人間こそ陽キャラって種別に属するそれなんだろうな。とはいえ、個人的には楽しめたよ。お酒があれば何処でだって楽しめる。ひとつも乗り物に乗らずに夫と我が子がそうするのを近くでずっと見守ってただけだけれどね、ただ一緒にいればそれだけでそこは楽園になるよ

 

こうやって旅行の思い出に浸ると困ったことに何処かへ無性に出掛けたくなる。もうすぐ夫の誕生日だから、彼のお気に入りのホテルでも予約しようかな

 

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そういえば、冒頭で書いたAL氏の夢は「彼が出演した『ヘッドランド』の例のカラオケ・ナイトの撮影シーンで煽ったビールがなぜかホイップ・クリームにすり替わっていたせいで何度も瓶を傾けるものの中身が口腔内にすら到達しないことを不思議に思いながら演技を続けてカットが掛かった後に首を捻る」だった。こうして書くと分かりにくいことこの上ないし、たとえ分かったとしても内容が実にくだらな過ぎる…。どうせ夢を見るなら、もっとましなのがよかった。とはいえ、そうして首を捻ってる姿も素敵だったからよしとする