たまには別の角度から人物像に迫ってみるのも悪くなさそう。彼をよく知る同業者たちによる彼に対する言質を集めてみました。その出演作鑑賞中に目に付いたゆえたまたま思い付きではじめただけのことで、別に人格や人物像に迫ろうなどとする大それた目的があった訳じゃない

 

「あの外貌だけでも充分貴いのに類稀なる歌唱力と細部にまで冴えわたる演技力ととんでもなく恵まれた姿態を存分に活かし切れる舞踊力とか何か一つくらい短所があって然るべきでは???」と思い続けて久しいものの、結論から言うと今回も見付けるに至らなかった。この人は一体どこに欠点があるわけ?

 

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『From Broadway To La Scala』など複数にわたって共演するデヴィッド・ホブソン

「彼はオーストラリア音楽界における王族のような存在だよ。偉大な歌手であるマイケル・ルイスとパトリシア・プライスの遺伝子を引き継いでる。彼の兄弟であるベン・ルイスも素晴らしい歌手だしね。僕は幸運なことにかつてご両親と共演して、今こうして彼と同じ舞台に立とうとしてる」

 

『キャンディード』(2019年)で共演したケイネン・ブリーン

(「この役を演じることを本当に長い間心待ちにしていた」という彼に対して)

「僕もこの役を演じることを本当に長い間心待ちにしていたんだよ。まあ、彼が演じるんだけどね(笑)。その時が待ち切れないよ。彼ならきっと万事うまくやるだろうから」

 

 

おまけ)

彼の実兄ベン・ルイス(これらの記事群を読んでようやく兄弟順が分かった!)

 

「(自らが同作でタイトルロールを演じるようになる以前に)最後に『オペラ座の怪人』を観たのはオーストラリアで、今から10年程前*のことだったかな。僕の兄弟のアレクサンダーはラウル役で出演しながら怪人役として代役に選ばれてもいた。彼がはじめて怪人役を務めるのを観に行ったんだよ。恐らく僕の方が彼よりも緊張していて、彼のことばかりを上演中ずっと眺めていたくらいだったから、その時のことは全然覚えていないんだ。彼は素晴らしい偉業を成し遂げたんだけどね、それを本当に誇らしく思ったよ!」

(*抄訳注:このインタビュー自体は2017年のものなので大体正確性を喫してる。アレクサンダー・ルイスが同作に出演しはじめたのは2008年のことで、代役として怪人役を務めたのは同年〜2009年に掛けてのこと)

 

「僕の弟は実はラウル役を演じていたんだ――それは彼が演劇学校を卒業してからはじめて得た役の中のひとつだった――そして、代役として怪人役も務めた。彼が最初に怪人役を演じた時が実は僕が最後にこの作品を観た時で、今から10年程前のことだったはずだよ。万事うまく行くように祈りながら全身汗だくになって観ていたから、肝心の作品自体についてはまるで覚えていないんだ」

 

この作品の役柄について弟さんと話し合うことはありますか? 彼はいつ観に来るでしょうか?;

「ここ最近ではオペラ歌手として世界中を飛び回っている彼のことだ。だから、その答えは分からないな。たまに話したりすると楽しいね。僕たちは電話越しにサッカーの話題じゃなければ役柄のことについて情報共有し合ってる。なかなかユニーク(な間柄)だよ」

 

「僕は家族を誇りに思うんだ。僕の子供の頃には警備員なんていなくて自由に楽屋へ出入りしていたっけ。いつもオペラを俯瞰しながら育ったようなもので、それは素晴らしい経験だったよ。でも、やがて年齢を重ねるにつれて敬遠するようになって行った」

(以前にアレクサンダー・ルイスも同じ趣旨を語っていたけれど、それに続く文言は「この仕事を自然に選択していた」だったので、その帰結は大分違う!)

 

「(上略)実は僕が再び同作を観たのは最新のオーストラリア上演版ではなく、アンソニー・ウォロウとアンナ(・オバーン)主演によるものだったんだ。その上演版には、僕の弟も実はラウル役で出演していた」

 

なんて素敵な家族間の絆が『オペラ座の怪人』にあったものでしょう。この世は狭いですね;

「はは、そうだね。僕たちにとってちょっと特殊な家族間の絆が『オペラ座の怪人』にはあるよ。僕の兄弟であるアレクサンダーはラウルを演じながらアンソニー(・ウォロウ)の代役でもあったから怪人役も数公演にわたって完璧にこなした。僕たちは今ではそれぞれ同じ役に親近感を抱いてる、それって最高だよね」

 

アンナ・オバーンはご兄弟と本編を演じ、あなたとは続編で共演していますよね。それって稀有なことでは!?;

「そうなんだよ!まだリハーサルがはじまったばかりの頃に、時折アンナが不思議そうに僕を見ていたのを覚えてるよ――彼女は僕ら兄弟の特徴の共通点を見抜こうとしていたみたいだけど、僕たちが全然違うってことに気付いたようだ。わずかに時間が掛かったとは言え、まったくの別人だって事実を理解してくれたよ(笑)」

 

それは大変に面白いですね。あなたとあなたの弟さんはどちらもバリ=テノールですね、あるいはあなたの方がよりバリトン域でしょうか?;

「そうだな、彼は今でこそテノールだけど、僕たちが活動をはじめた頃はどちらもバリトン歌手だった。彼は、実はここ1年半ほどメトロポリタン歌劇場のリンデマン(若手育成研修制度)にいて、常にオペラへ出演することを望んできた――僕たちの両親は共にオペラ歌手で、僕たち家族にとってその存在は身近なものだったからね。彼自身もそれに倣うという希求を抱いていた――彼はそこにいるのはそうした理由からで、来年もきっとそうするだろう、2013年までは」

 

彼にとっては好事かと――かくて、ご兄弟揃って成功を収めたという訳ですね!;

「『オペラ座の怪人』でタイトルロールを演じてからこちら12ヶ月の間に、彼の声はリリック・テノール域へ変化を遂げたんだ。僕の声に同じ事態が起こり得るとは思えないけどね――僕の方がよりバリトン域に近かったから。とはいえ、それはいいことだと思うし満足しているよ」

 

まさしく! 『オペラ座の怪人』と『ラブ・ネバー・ダイズ』における主演を務めたおふたりの間だけに通じる三段論法があるのですね;

「うん、ちょっと変わっているけれどね。同時に素晴らしいことでもあるんだ」

 

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現在までに彼に関して言及され観賞および読了したインタビューとしては、こんなところ。今後また見付けるごとに随時にわたって更新していくことにします