さて、今週も火曜日はオペラ関連ニュースを。昨日に開催された第96回アカデミー賞授賞式ではロバート・ダウニー・Jr.らのアジア人蔑視が酷かったそう。その件で各SNSは持ち切りなのが理解に苦しむよ、彼ら毛唐は気の良い人種であれど押し並べて洞察力や教養に欠けるなんて自明だ。「えっ、$800の20%をググらずに計算できるの!?」とかのたまう程度の教育落伍者だよ、そんな相手に何をか期待を抱かんや

 

それに、この映画やアニメーションは、彼らが産み出しし文化だ。自前のそれにおいては外国人の参入を許さず護っておきながら「自分は受け入れられて然るべきだ」とは傲慢が過ぎるな。かつてナチス政権下におけるBPOでユダヤ人楽団員問題が持ち上がった時以上の人種差別なんて、今日でも我が国の市井そこかしこで嫌でも目に入って来るじゃないか? もし言葉を突き立てたいなら、まずは己が胸にするがいい

 

どの国どの分野にあっても国籍や人種や民族または性別や性嗜好ではなく才能そのものによって処遇されるべきであり、またそうあることを望む。そして、その先陣を切って他分野を牽引する存在こそがオペラであってほしいとも。こんなのわざわざ言明することじゃないんだよ、まったくくだらない。以下、何事もなかったかのようにオペラ関連ニュース;

 

ザルツブルク復活祭音楽祭、来年2025年のテーマは「傷と不思議」?

毎年異なる主題を掲げるザルツブルク復活祭音楽祭による今年のテーマは「イタリア」で、それに伴ってアントニオ・パッパーノ指揮によるサンタ・チェチーリア国立アカデミー管弦楽団演奏のヴェルディ「レクイエム」やポンキエッリ『ラ・ジョコンダ』の上演が予定されている。同音楽祭が開催に先駆けて公開したページ上部には"Wounds and Wonders(傷と不思議)"と大きく記載され、これが来年の主題と見られる。主な演目としてはムソルグスキーによる歌劇『ホヴァーンシチナ』やメンデルスゾーンのオラトリオ『エリヤ』など。また、ソンドラ・ラドヴァノフスキーやソク・ジョンペクに加えサイモン・キーンリーサイドらを迎えてオペラのアリアや二重唱が特集される

 

Virginia Opera changes opening night opera for 2024-2025 season

合衆国ヴァージニア・オペラは来シーズンの開幕を飾る作品として、かねてより発表していた『神々の黄昏』に代わって『ドン・ジョヴァンニ』とすることを明らかにした。主に財務上の問題によるもので、同オペラ総監督兼CEOは「最高の芸術を提供するためにはやむを得ない判断だ」と説明している
しばしば「貴族の娯楽が起源」と揶揄されるオペラに商業上の合理性を求める行為それ自体に些かの無理があると言わざると得ないものの、今後こうした動勢は増加を極めることでしょう。先日お伝えしたとおりに、我らがMETにおいても「なるべく大々的な演目は避け有名作で稼ごう」なる既報があったばかり。これはオペラ愛好家にとって非常に良くない傾向だ
 
メトロポリタン歌劇場は、今年6月にメトロポリタン管弦楽団としてはじめてとなるアジア・ツアーを行うと発表した。この計画は当初2022年の実現を予定していたものの、先達ての新型コロナ禍によって頓挫を余儀なくされていたもの。同歌劇場音楽監督を務めるヤニック・ネゼ=セガン指揮の下エリーナ・ガランチャやリセット・オロペサらがソウル・台北・東京・兵庫の各都市で公演する。主な内容としてワーグナーをはじめドビュッシーやバルトークなど幅広いオペラ作品から抜粋されるという。同管弦楽団による海外公演としては2000年以降わずかに3回目となる
 
先週に同カテゴリではサン・カルロ劇場においてガザ停戦の訴えがあった旨お伝えしており、正しくそれに追随する「朗報」だ。しばしば「オペラの最高峰」とも称されるスカラ座の出演者とスタッフらがガザ停戦のために横断幕を掲げた。当夜に上演された演目である『マディーナ』は、奇しくも反ロシアを題材どった物語である
以前にも既報のとおりにスカラ座が政治的主張を行うのはこれがはじめてではなく、現音楽監督リッカルド・シャイーがウクライナで慰安コンサートを開催したばかりでなく、その演目から『ボリス・ゴドゥノフ』を外すことやロシア人らの雇用を停止する要請を退けた経緯がある。これに対して観客は約2分間にも及ぶスタンディングオベーションで応じた
 
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そのほかのニュースとしては…かねてウィーン国立歌劇場におけるキャスト変更に伴って『ラ・チェネレントラ』のドン・ラミロ役をフアン・ディエゴ・フローレスが務めること、『めぐりあう時間たち』の録音盤発売あたり。ここで予約できます。そのMET上演に合わせて『アクナテン』を観たけれど、件の映画で劇伴を務めたフィリップ・グラスが作曲を務めるべきだったのじゃないかと思えてならなかった