最近Netflixで『スープの国〜韓国汁物紀行〜』を観たら、冒頭から「食べてみたい」「おいしそう」「どんな味がするんだろう?」と煩悩と好奇心に対する波状攻撃に当てられてしまって、こうなると欲求を満たさずにはいられなかった。いつまでも「果たすべき義務」についてはのらりくらりと手を付けるまでに時間が掛かるくせに、わずかでも自分の興味が向く限りにおいては俊敏性が高まるあたりが最高に俗物って感じだな

 

そうと来たらすぐに取り掛かれるのが料理の醍醐味のひとつ。そして、まだ見ぬ調理法や材料を屈服させた時の達成感や征服欲の充足度と来たら、ある種の合法的な麻薬だ。それだって振る舞う相手がいなければ虚しい徒労に終わるかもしれない。こうして頬を綻ばせながら頬張ってくれる家族がいるから料理が好きなのかも。そうして「おいしい」って言ってもらえるだけで「また作ろう」って思えるから

 

 

先述したドキュメンタリー内で頻出したスユク。それに葉物や薬味などを添えてやや格式張ったものをポッサムと呼称するのだそう。それに倣ってサンチュにサムジャンと薬味を添えて

 

何を韓国料理と定義するかはそれぞれでしょうとも、私にとっては箸休めのような小鉢物の多さにある。そうした訳あって、折角だからナムルも作ってみた。画像左からニンジン、たけのこ、しめじ。特にニンジンは食感も楽しくておいしかった

 

いわんや韓国料理の代名詞とも言える純豆腐チゲ。この熱く熱したスープに生卵を落として、それを味わっている間に白身が熟してきた時こそ黄身を崩す好機だって教えてくれる。こんな見た目でも全然辛くない不思議

 

同番組で訪ねた済州島名物料理らしく、最も味の想像が及ばなかった。特に言及されていなかったため料理名は不明、新鮮な生イカに胡麻油と魚醤を注いで細かく刻んだにんにくとネギに粉末状の唐辛子をまぶして和えるだけ。これまで食べた韓国料理の中で群を抜いてお気に入りになった

 

これも同出典より「もやしクッパ」、出演者が最もおいしかったと太鼓判を押したのも納得のおいしさ。先程のポッサムのメインとなる豚肉の茹で汁にダシダを加えたものを件の豚肉とそれに添えた薬味さらに別に蒸したもやしに掛けただけ…の完全なる我流。しかも、結局は白米を入れなかったっていう
 
 

最近気付いたこととして、私は接客業が好きなんだ。かねて新卒時に大変な就職難でやむなしに飛び付かざるを得ない仕事だった、あるいはそうであったものが時間と経験を隔てて次第に変化したのかも。「なぜ接客業が好きなのか」と言えば、それはその時その場にいる相手に必要とされ寄り添うことによって、あまつさえ笑顔を拝んで完結できるからに尽きる

 

これまでに何度となく舞台に立ったしライター業に従事していた時もあった。しかしながら、私にはそこに存在しない不特定多数の誰かのために汗を掻き努力をするのは性に合っていないな。いつも自分の目の前にいる相手のことしか考えられない。そう考えるだに、改めてオペラ歌手っていうのはとんでもない職業だ。まだ相見ぬ観衆に対して研鑽を重ねてはそこに感動を呼び起こすことさえ出来てしまえるのだから