さっき実母に「母さん、俺殺っちゃったよ……」から続く全歌詞をメールで送ったら、すぐさま返信を寄越して来た;「いくらQueenが好きだからって、こんな時間にやめなさいね。あなたは洒落にならないんだからと書いてありました。我が母の中で、私は一体どんな位置付けなのか。ちなみに、自分の名誉のために言っておきますが、もちろん前科はありません。ね!ん!の!た!め!

ええ、Queenが好きです。その中でも"Bohemian Rhapsody"は、殊更に。Queenの中で好きな曲を挙げるとしたらBestもSecondも19thもあるけれど、さあれど特別な曲であることに違いありません。この曲を前にすると「いつも耳馴れた曲を聴くと死んじゃう病」さえ鳴りを潜めます

 

それくらいに好き、つまりは大好き。これを「フレディによる葛藤の独白」だと尤もらしい論調で決めて掛かる評文は星の数をくだらない。私に言わせるなら「うるせえ、黙って聴け」だ。彼がどんな想いを楽曲に託そうと、彼の性嗜好がどうだろうと、それを音楽において表現することを選んだ以上は、私達は憶測を語るべきじゃない。そんなことがあってもなくても素晴らしい楽曲はその真価を変えることがない、だからこの曲が好きなのだ

 

 

さまざまなカヴァー版を聴いた。これが斬新であることに異議はない。とはいえ、これは"人殺し"の歌じゃないな。まして「人を殺して逡巡している労働階級の若者」の歌では。何処へも抜け出せずに、あまつさえどんどん"深み"にはまり続けて抜け出す術は夢物語でしかないような現実に説得力を持たせるのは並大抵のことじゃない

 

さらに難解なことに、この曲は中盤で"現実"を離れて、突如として"夢物語"になる。だからこそ名曲と謳われて久しいのだとも。ほらね、やっぱり難解だ

 

 

とはいえ、この挑戦ですら新鮮かつ無二なものではないだろうか。錦織健さんのことは大好きです。まるでおとぎ話の絵本から抜け出して来たように抜群に格好よくて、

とてつもなく美しい声を持っている。しかも、どんな会場も沸かせられる"ひらめきの人"。この上なくトーク上手

彼ほどの人はいないって思う、だからこそフレディと同じ土台に乗らなくたって…。いつかの舞台に登場する際に弾いていたギターの腕前は最高、まるでそのフォルクローレ専門家かと思っちゃったほどよ。その後に聴いた『椿姫』のアルフレードは可愛かった、アムロ・レイの物真似も得意なんだね

 

 

かつて"違いの分かる男"を謳っていながら、あろうことか「料理の鉄人」に審査員として出演した際に料理の感想を求められて「どっちも同じ味じゃないですか」って失言しちゃったのは…ほぼ同時期に同じCMに出演していた熊川哲也さんだっけ。料理人さんに「何処が"違いの分かる男"なんですか」ってツッコまれていたな

錦織さんならそんな野暮はしないはず。彼なら、たとえ"下ネタ"のような超変化球にだって対応してくれること請け合いだわ。実際にこの名言を言ったかどうかは別にしても信憑性はバッチリ。「常にバレエは敷居の高いものでなくてはならない」という熊川さんより、私は錦織さんの音楽に対する向き合い方が好きだわ

 

 

 

そして、件のCMと、その使用曲。以前に請われて『トゥーランドット』のあらすじを話す機会があったのだけれど、「それで、ここで"誰も寝てはならぬ"が歌われてね?」って言った途端に、何故か「は? そんな題名の曲とかプレッシャー過ぎて無理!」って爆笑されました。私は歌の魅力を伝えることができずに歯噛みしたものの…この熱唱を前にしてなお寝ていられる人がいるなら、ぜひとも会ってみたいわ

あれ…今気付いたものの、このカラフの衣裳って、なんか変じゃない…? "そこはかとなく"といわずムンムン充満する『オリンピアーデ』臭がすごい。私がトゥーランドットなら見た瞬間に噴き出しちゃいそう。しかして、そんな変てこな装いさえもきちんと絵になる

いずれにせよ、彼は喝采の似合う人だよね。それを一身に受けて然るべき人とも。どんなかたちであれ活躍し続けていただきたいものです、いつまでもお元気で