ところで、現在放送中の"American Idol (season 19)"だけど、先週はいよいよTop 10にまでしぼられ、さらにはメンター(助言役)としてジョン・ステイモスが登場。その課題曲がディズニーに纏わる曲だったので、ここでも触れておきます

 

以下、各コンテスタント(参加者)たちの選曲とそれに対する個人的な所感など

 

過去のシーズンから通して"アメリカン・アイドル"を観ていると、おおよそ一人は彼みたいな音楽性を得意とする参加者がいる。それってつまりは持ち味がロックな、かの国のにおける学校カーストでいうところの一匹狼的な存在ってことだけど、そうした人物が優勝した例は極めて少ない。彼は今後果たしてデイヴィッド・クック(シーズン7の優勝者)になれるのか? それともドートリーやジェイムス・ダーヴィンの路線に化けるのか???

 

どうしてこれを歌わせたんだろう? 確かにいい曲だよ。ただし、彼みたいにすこぶるに声がよくて音程が安定しているけれども、あまり音域が広くない歌い手には向かないような…。誰でしたっけ、かつて1オクターブ下げて歌って客席を辟易とさせたソプラノ歌手がいたよね。既存の曲に手を加えることで高みに昇れる場合もないとは言わないけど、それが"ある一定のレベルに落として合わせる"って意味だとしたら最悪だ

 

その点で言えば、彼は本当に優れていた。まれに音程が不安定に運ぶことがあっても、その世界に私達を余さず惹き込んだ。毎回の選曲が実に見事で、それこそが彼独自の世界観を築き上げていたと言っても過言ではないんじゃないかな。この週もディズニー愛好家にとってはたまらない編曲に仕上がっているし、それを歌いこなせてもいると思うのに、まさか脱落しちゃうなんて。私にはアメリカ人が分からないよ、本当に分からない

 

クリステン・スチュアートのような高潔なまなざし、カイア・ガーバーに似た愛嬌ある面持ち、アリアナ・グランデと見紛う稀有なアイドル性。このシーズンの中で、彼女に恋したティーンは多いだろう。実際には、その出来映えはどうあれ「オリジナルの方がいい」と考えさせる余地がないことが大事だ。ともあれ、彼女は前週までに"Black Hole Sun"も歌ってる。これも実はディズニー関連曲と言えなくもないんだ、かつてはパーク内で流れてたからね

 

どんな人もさままざな人生における節目と、そこから変わる世界観があると思う。私にとってはこれがそうだ。幼少の頃から知っていて、長らく「つまらない旋律に陳腐な歌詞だ」と思い続けて来たのに、我が子を持つ現在では「こんなに心揺さぶられる曲はない」とさえ思う。そうして、この編曲を聴いた今では、なおさらに。もしランディがまだ番組に残っていたら、恐らくこう言ってるはず;「こいつは優勝を狙いに来てるぞ!」

 

巷には「磨けば光る原石」なんて言い回しを体現したようなこの番組を通じて、私達視聴者は飛礫がダイアモンドに代わるさまを何度も目撃して来た。今季中で私が最も垢抜けたと思う参加者である彼女は伸びやかな声が特徴的で、この曲とも親和性があると感じたんだけど…審査員のケイティ・ペリーの発言に反して、その魔法は12時を待たずに解けてしまったよう。もしやゼンデイヤがMETガラで着てたものの二流品みたいなドレスが敗因だったり…?

 

"超"が付くド田舎国家のアメリカでは、どの人種も所属すべきコミュニティを逃れ得ない。まして、こうした視聴者の支持をより強固なものにする必要があるリアリティ番組ではなおのこと、そうだ。だから、この番組ではそうした典型を守って南部出身者はカントリーに徹するし、黒人はファンクを歌う(傾向にある)。それは限られた課題の中で選択肢が少ないアジア系にとっては不利であることを意味する。でも、彼はこの夜教えてくれた。どんなに分の悪い勝負でも、傑出した才能を前には平伏さない者などないことを

 

この夜、最低の出来映えだった(と個人的に感じた)パフォーマンスがこちら。そもそも先週までの成り行きを観ている限りでは「なぜ彼女が本選に残れたんだろう?」とさえ思ってしまう。これなら、そこいらの素人を連れて来た方がまだましじゃない? "カサンドラ"って名前からすると、恐らくギリシャ系なんだろうか。もっと粗を隠せる選曲がいくらでもあったはずだけど、それを許さない土壌も含めて"アメリカン・アイドル"って感じ

 

先述した動画の中にいささか攻め過ぎたきらいのある編曲があるかと思えば、こちらは凡庸の一言に尽きる。どうして随一のクリエイターが犇めき合っているはずのこの場所で、こんなに伸びしろがありそうな曲を活かしきれないんだろうか。いわゆる"凡庸"というのは、よく言い換えれば"王道"たり得る訳で、そこへ押し上げられなかったのは、彼自身の力不足だと思うけど、それは持って生まれた類のもの(スター性とか)で、誰も悪くないのが悪いよ

 

先週の"アカデミー賞候補曲"の回では、なぜかWilliamsの"Happy"を歌って、それを飼い慣らすどころか手綱ごと振り回されるがごとく苦戦した彼女は、今週は文句のない選曲&我々視聴者の予想を遥かに上回る素晴らしい仕上がり。今季における押しも押されぬ歌姫は、やっぱり彼女を措いて他にいないと思う。それ程に他の追随を許さない圧倒的な存在感。たとえ優勝が叶わなくても断言する、今後このシーズンで最も商業的に成功するのは彼女だって

 

 

さて、ここまで書いたところで早くも今週(課題曲はコールドプレイ)の結果が明らかに。そう遠からずハンターが脱落することは分かっていたけども、まさかアーサーまでとは…。まったくアメリカ人のことが分からないよ、多分脳みそにまでスクラップル詰まってるな

 

 

そういえば、昔バーで知り合ったアメリカ人が辛口コメントをしない審査員をなじってて、歴代審査員の中で最もスティーヴン・タイラーが好きだった私としては戦わざるを得ずに、彼を結局は泣かせちゃったことがあったっけ。あの時はごめんね。でも、すべからくアメリカって未開人のくせに独善的だし仕方ないよね

 

 

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今週末の課題は"自分が目標とする歌手やアイドルの曲"。こういう時に自分の好きな曲が選ばれるとテンションぶち上がるよね!

 

それを終えると、いよいよ来週は今季の最終回。個人的なTop 3予想は、Casey Bishop, Chayce Beckham, Grace Kinstlerで間違いなし

 

とは言え、どんな番狂わせが待ち受けているか分からないのがこの番組。実際に過去のシーズンでもあらゆる驚愕と衝撃の展開が視聴者を待ち構えていたことだし、最後まで刮目を続けたいと思います