前回の記事までで弾みをつけたので、この際なら個人的"アメリカン・アイドル"のパフォーマンスを挙げてみようかなって。何故かと言えば、そう。だって、暇なんだよ。

ここのところ自宅にさえ碌に戻れていないし、さっき受けたPCR検査の結果が分かるまでは誰とも近付くことさえ出来ないんだから

 

 

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地方オーディションの時から貫禄とスター性があって、どんな曲もすこぶるの歌唱力で手懐けた彼女。誰もが優勝を確信していたことだろうに、実際の"その時"には感慨も一入で言葉さえなかった。そういえば、およそ15年前のS.カレルのあの台詞に対して共演者が陳謝したなんてゴシップも数日前にはあったっけ…。当時これを一緒に観ていた相手が英語も日本語もどっちもだめで、そのくせにやたらに生真面目だったせいで、この台詞について深い含蓄を求められた記憶が蘇って来た。むしろ、私に謝って欲しいわ

 

今でもこれを「"アメリカン・アイドル"におけるベスト・パフォーマンス」と位置付ける人も少なくない名演。彼は確かに伸びやかな声が素晴らしく、その純朴さを裏付ける"聖歌隊出身""プロミス・リング(純潔を誓う指環)を身に着けている"ことから、(信仰心の篤い)南部を中心に支持を伸ばしていたけれど、あえなくの準優勝。その後、今となってはお決まりとも言える同性愛が最善とは言えないかたちで発覚して、現在に至る

 

D.デガルモの"Don't Cry Out Loud"と超迷った。けども、彼女の洗練された外貌と、それに不釣り合いな甘い夢を見るようなハイ・ヴォイス、それに駄目押しするような嗄声のアンバランスさは「必ずや商業的な成功を拝むだろう」と当時も思った。しかし、余談ながら、彼女が難読症を告白した時には、それさえも興行的に利用されるのを免れないとも感じた

 

全シーズンを通して、私にとって一番お気に入りの候補者であるコンスタンティン・マルーレス。彼が選ぶのは素敵な曲ばかりで、その解釈は数多の視聴者を唸らせた。そんな彼は、その後にDV容疑で逮捕されるなど、あたら耳障りよろしくないゴシップに塗れてしまってる。そして、この世界に生きる誰しもがそうであるように、すべからく美貌というものは時間の経過に抗えない。だからこそ、この時代の在りようが思い出されて仕方がないんだ

 

最も思い入れの深い年を訊かれたら、それはシーズン5だ。現在も歌手業で成功している人が多くて、実際に粒ぞろいだった。私のお気に入りは超天然金髪ちゃんのケリーと才能豊かなサラブレッドのパリス、それからナードっぽさ全開のケヴィン。でも、彼らが優勝するとは思ってなかった。今でもクリスのエリミネーションを思い出すと泣ける、もう10数年経ってるのに! 皆それぞれに活躍しているけれど、一番の出世頭はやはり彼女でしょう。別にファンじゃなかったものの、このパフォーマンスには心酔した。今でもBMTへ行けば、この歌声を思い出すくらいに

 

このシーズンにおける"推し"だった、メリンダ。毎回の選曲が秀逸で、毎週まさに文字通りに心躍らされることしきりだった。課題曲が「歌い継がれるアメリカ歌曲」の時には"I Got Rhythm"を、「イギリス生まれの曲」では"As Long As He Needs Me"を歌ってた。まさにミュージカルに寄り添ったコンテスタントと言えよう。この柔和な表情からとんでもなくトんだ歌声が繰り出されるという、その撞着も含めてスゴくよかった!

 

何かと多忙で、あまり真剣に観ていなかった。ような気がする。それが証拠に、最終週のことなんかまるで覚えてない。それっていうのも、彼が決して出来は悪くなかったのにこの週を最後に脱落してしまって、それと前後して実施された"アンドリュー・ロイド・ウェバー"ナイトで"JCS"を歌ったカリーも同様の憂き目に遭ったことで、もうこれ以上観る必要がなくなってしまったからだ。確かにクックはいい歌手だけど、何と言うか…あまり印象がないよ

 

これまでに誰かの声をして「素敵だな」って思った経験がない。それなのに、どういう訳か…このシーズンの優勝者であるクリスの歌声だけは聴き続けていたくて、この頃は通勤するにもインパするにもそればかり聴いてた。当時は「彼の声に恋した」って思ってたんだけど、あの頃も今も彼の声を聴き分けられない事実を一考するだに、それは壮大な思い違いだったのかも。最も人気を集めたアダムは選曲センスがピカ1だったって思う

 

このアレンジはいいよね、並み居る審査員たちには軒並み酷評されてるけどね。私は好きなんだ。もし「聴く耳がない」って言う人がいるとして、これに感じ入れない耳ならない方がいいって思うくらいだよ。このシーズンは、とりわけ女性の活躍が目立ってて、かく言う私はシボーンとクリスタルが好きだった。ほかのどこにもない唯一の、誰にも代えられない無二の魅力が結集し過ぎた。今の宝塚歌劇団95期に似てる。それぞれ異なりながらも、しかし"不世出の才能"を比較することは、私たち凡人には難しいことだ

 

恐らくと言わずに、これを初めて聴いた人は「放送事故か…?」って思ったことだろうと思うけれども。でも、私にとっては宝物なんだ。このシーズンは皆が仲良さげで、そうした様子を垣間見るだけで得も言われずに癒された。この頃は週末と言えば早朝から深夜に差し掛かるまで仕事に明け暮れることも少なくなかったんだけど、これだけが毎週末のご褒美だった。このハーモニーのおかげで生きて来られたんだ。皆大好きだったよ

 

ああ、このシーズンも仲が良さそうでよかったね。とはいえ、私はジェシカを、夫はフィリップを応援していたから、その頃の週末ごとの私たち夫婦の仲はよくなかった。そして、件の2人が決勝戦へ進んだことで、その関係性は最終週まで持ち越されることになって…結果は彼の勝ち。そのせいもあるし、そもそも運転中の選曲はハンドルを握ってる人にあることから、いつも我が子が眠っている間の車内ではフィリップの曲ばかり聴く羽目になってる。その歌声は風光明媚な景色に映えるから悪くないけど

 

私生活が目まぐるし過ぎて、すべてのテレビ番組から遠ざかってた2013年。それでも"A.I."だけは別で録り溜めして観てたはずだけど、残念なことにあまり記憶に残ってない。誰も彼もが"Radioactive"を歌ってたのって、この年だっけ? こぞって審査員たちが「優勝者を女性に」って息巻いてたのもこの年? 実際このシーズンにおけるTop 3は全員が女性で、それって記憶してる限りでは、確か初めてのこと。彼女は歌は下手くそながら特有の雰囲気を持っていて選曲もよかった。皆大好き、Evanescence

 

この年も引き続き大変で、何かと覚えていないことだらけ。でも、私たち夫婦にとっては珍しく"推し"が一致したシーズンだった。これまでに夫が気に入ったコンテスタントが優勝しなかった試しはただの一度もなくて、ようやく私もつまりは勝ち馬に乗ることが叶ったってわけ。いつだって人間の心を動かすのは、何気なく他愛ない瞬間だ。優勝者であるケイレブが"The Edge of Glory"を選んだ時に、彼の優勝を確信した。どうでもいいけど、私の目には彼がクロエ・グレース・モレッツに見えて仕方ない…

 

 

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個人的に思い入れのあるシーズンは、ここまで

 

そして、冒頭で書いたPCR検査の結果は(分かっていたけど)陰性でした。とはいえ、何故か急性胃腸炎に罹っていました。ははっ、うける。何度患えば気が済むんだろう。絶対的安静を守るため、最後にお気に入りを貼付して寝ます

 

 

何年も宝塚歌劇団を観続けて来て、それからオペラ界の趨勢を見るだに、ごく一部の例外を除いて言えることは、「その立場が人物を形成する」。それぞれ地方オーディションに参加した時には頼りなくて、毎週の審査では精一杯にもがいてた参加者たちは、今は皆が押しも押されぬ超人気の"アメリカン・アイドル"だ

 

次はどんな才能が顔を出し、その頭角を現すんだろう? そのことをただ考えるだけ、それだけでたまらなく胸が躍るよ。例えて言うなら、かのリヴィングストン博士の探索に出掛けた特派員が探し人を見付けた時の心持ちと同じように