先達ての記事では、数々の作品を手掛けたアラン・メンケン氏の最盛期とディズニー第二期黄金期の興隆の重なりについて書いた上で、そのどちらにとっても代表作と言うべき『美女と野獣』について触れました。かつて野獣が愛の力によって人間の姿に戻りベルと大団円を迎えてから31年、その原作が生み出されてからは実に290年近い年月が流れているにも関わらず今なお愛される不朽の名作

 

今夜は長年にわたって愛されてきた同作が「どのように愛されてきたのか」を解説して行こうと思……ったのだけれど、実際に書いてみたら自分でもビックリするくらい面白くなかったので、個人的にお気に入りな関連動画群を貼付して「ああでもないこうでもない」と生産性のない思いの丈をぶつけていこうと思います

 

みんな大好きコクトー版。冒頭からとんでもなくおしゃれ。もしこの映画が擬人化したら、私なんか眼中にも入れてもらえないと思う。肝心のベル役の美しさはもちろん野獣の造形も素晴らしい。一方でディズニー版の野獣は水牛やイノシシなどの要素も組み込まれているにしても、そのモデルは明らかにコクトー版のそれだと思う。彼が描く野獣は、それが彼自身の嗜好なのか猫っぽくてかわいい。そのまま抱き締めてもふもふしたい。皆そう思ってると思うことを代弁すると、「一生このままでいて欲しいです」

 

ベルが臆することなく「野獣」って呼び掛ける精神性が何度観ても理解できないのだが、それを「えっ、野獣って呼ばないで!?」とならない野獣のことはもっと分からない。いわゆるA.D.(ディズニー版公開以降)と比べると確実に原作に近いものの、何度観てもあの結末に納得も行ってない。今思い出しても苦い薬を飲んだ時みたいな表情にならざるを得ないっていう

 

歴代のテーマソングを挙げると、ディズニープリンセスもプリンスもよく歌う!こう考えると、ほぼ歌わないで通してるプリンスって『TLM』のエリック王子くらいだ。ちなみに、続編ではちょっとだけ歌うんだけど、その声を24か国語で比べてみた結果として、どれよりも日本語が最高っていう話はもうしたよね?

 

話題を戻すと、この曲はこれまで第二期黄金期を主に音楽面から牽引してきたハワード・アシュマンがアラン・メンケンと組んだ最後の曲であり、彼自身の遺作でもある。彼が終末期に身を置いていた病院から、今の若い人は知らないであろう公衆電話で電話を掛けて何度も遣り取りしたというのはファンの間では有名な逸話だ。その関係性が産み出した最高位ともいうべき絆の結晶が「愛の芽生え」だなんて、なんて素晴らしいんだろう。それ自体がまるでおとぎ話みたいだ

 

そんな不朽の名作である『美女と野獣』だけれど、その舞台化には碌なものがない。このWDWで上演されている簡略版にしても「…もっとどうにか出来なかったの?」要素が満載過ぎる。ある程度の制約は仕方がないにしても何となしに踊りながらはけて行って華々しく正装で戻って来るくらいのことができないのは何故なんだぜ?

 

そして、常にベル役の容姿が安定しているのに対して、なぜか野獣は「人間に戻ったんじゃ!?」みたいな役者が多すぎる。その中でも個人的なベストを貼付したつもりだけども、冒頭と比して再登場時で明らかに髭が濃くなってるあたり本当にアングロサクソンあるあるが過ぎる

 

同じ舞台でもディズニー・クルーズ・ライン(DCL)のこちらはよさげ。ご覧のどおりにベルの父親であるモーリスが狂言回しを務めていて、いわゆる見どころのひとつである"Be Our Guest"にも大きく手を加えられている

 

こういうのが舞台を変えることの利点だとつくづく思わざるを得ないな、さまざまな客層がいるのは確かだしそれに合わせた完成度が必要だってことが分かるよ。毎回DCLを観るにつけ思うけれど、ほかとは異なる制約ある海上だからこそ実現しうる世界観もあるのかも。それには尤も先行した投資が必要であることを理解できない人間も多くはなさそうだし

 

ああ、この未公開映像はいいな。主演の2人をはじめ出演陣の結束とそれがもたらすケミストリーがよく分かるよ。誰もが気付いているのに言わないけれど、このベルってヒロインはちょっと厄介なんだ。あまり共感できないというのかな。冒頭で街一番の色男であるガストンがその容姿を理由に胸を反らしていることを小馬鹿にしている。つまり自分はその知性を鼻に掛けて、彼や彼に惹かれる村人たちを見下している、それが野獣との出会いによって変わるんだ

 

よく「原作とは異なりベルが野獣に教養を授ける」なんて書いてある解説本を目にすることがあって、ある意味では確かにそうかもしれないけれど、実際にはベルが野獣から得たものの方が随分大きいんじゃないかな。徐々に愛を知って心情を変容させていくベルを等身大で演じたエマ・ワトソンは"ベル"に相応しい人だ。彼女と同世代の実力派女優はいくらでもいる、だからって彼女たちを起用してはこうはならなかっただろう

 

こんなに人の心を奪ってどうしたいっていうんですか?

 

 

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以上、『美女と野獣』公開記念日に寄せてのコンマリでした

 

もうすぐ年末だからやらなくちゃいけないことだらけなのに、毎冬恒例化している風邪を引いてしまって思うようにいかないまま、現在に至ります。うん、なんだか人生って感じだな