たまには推し以外の話を

 

昨日の記事でMETの『メリー・ウィドウ』と、そこでサン=ブリオッシュを演じるAlexander Lewisさんのことについて触れました。実は、彼はオペラ・オーストラリアにおけるプロダクションではダニロヴィッチ伯爵に扮しているんですよね

 

同オペラは独自のストリーミング・サービスを持っているので、そこにアーカイブでもあるものかと検索に掛けるものの、まったく以てヒットなし。しかし、どうしても観たかったので「今後どこかで観られる可能性ありますか〜?」と担当者にメールしてみたところ、それから2日後となる昨日付けで返信アリ。曰く「残念ながら撮影入ってないので無理ですね」とのこと

 

折角の担当者の有能振りが却って徒になるとは。もう少し返信を引き伸ばして夢を見せてほしかった。…と、我ながら理不尽なことを言うようですが、このティーザーを観てしまったら、誰しも理不尽になること請け合いだから、皆観て

 

 

 

 

ここで"陽気な未亡人"ことハンナ・グラヴァリに扮するのは、Julie Lea Goodwin。これまでにオペラのみならずミュージカルでも数々の名演を残している歌姫で、その功績にふさわしく歌唱力はもちろん演技にダンスに三拍子そろった実力は、これらの動画でもお分かりいただけるとおり。特に『ウェストサイド・ストーリー』のマリアは、「生来の無垢な少女から愛を知ることで大人の女性へ成長していく演技力が凄まじい」と評論家より絶賛を受ける

 

そんな彼女にとっての"運命の人"としてトニーやダニロといった相対する役柄でコンビを務めてきたアレクサンダー・ルイスは、「幼少期をロンドンで過ごし、いわゆる芸能一族の一員としてパース(オーストラリア)などで、多くの研鑽を積んだ」という経歴の持ち主。その「など」にはサン・フランシスコのメローラやMETのリンデマンなど錚々たる若手芸術家育成プログラムが含まれていて、どうやらMETに出演したのは、そうした経緯が裏打ちになっているようだ

 

 

ここまで書いた時点で杯に残ったワインを飲み切っていなかったので、"酒肴"のおかわりを。彼はQPAC(クイーンズランド・パフォーミング・アーツ・センター)がミュージカル歌曲をミラノ・スカラ座で歌い上げるといった趣旨による公演にも参加している。ほかにも"ジョーン・サザーランドの再来"と謳われるエマ・マシューズや元会計士という異色の経歴ながらMETデビューまで果たしているテディ・タフ・ローズなど、その共演者も豪華であること極まりない

 

ここで『真珠採り』の二重唱を歌っているのも、個人的に刺さる…けれど、これも映像化はナシ。あらゆる市井にあふれる悲哀を綴るオペラと違って、どうせミュージカルは愛だの夢だの希望なのを歌っているのだろうから、これくらいは配信なり円盤化の発売なりしてくれてもよくないですか?