上手くいっていることないですか? | 臨床心理士の今日の一言

臨床心理士の今日の一言

~パークサイド広尾レディスクリニックのカウンセラーより~

悩んでいるときに忘れがちなことがあります。
それは、身の回りで起きている上手くいったことです。



あなたが今大きな悩みに覆われているとしましょう。
その悩みの覆いが取れてしまったときはなかったでしょうか?
何がきっかけでそうなったのでしょうか?



2時間続いていた過食は2時間後に何があって止まってしまったのでしょう?

何かに触れるだけで手を洗わずにはいられなかったのに、うっかり洗い忘れてそのままでいれたときはなかったでしょうか?
忘れるのに何が役に立ちましたか?



いつもなら問題が起こる状況なのに、そのときに限って何があって困ったことが起きなかったのでしょうか?


問題が起こるはずなのに起こらなかったときのことを、「例外」と呼びます。
この「例外」を探索し、「例外」を再び、より頻繁に起こすにはどうするのがいいのか話し合い見つけていくこのカウンセリングの方法は、解決志向アプローチといいます。
2005年の調査によると、カウンセラーの25%がこの方法を主に取り入れてカウンセリングを行なっていて、41%が今後学んで習得したい方法としてリストアップされている現在注目されている方法です。



スティーブ・ド・シェイザーというアメリカの家族療法家がいました。
解決志向アプローチという方法をまとめた人です。
1970年代から80年代の初めまで、彼とその仲間は問題が明確になりその原因さえ見つけられれば、対処法が見つかり、問題は解決すると考えていました。
そして、さまざまな問題にそれぞれピッタリくるような解決法はないものかと日夜探し続けていました。



しかし、1982年にある家族のカウンセリングをしていたとき、彼らをびっくりさせるようなことが起こりました。
相談に来た家族のメンバーはお互いの話しに割り込みながら、27個もの問題を羅列しました。
そして、その問題のどれとして明確に説明されたものがなかったため、問題に対応した対処法(治療法)を作ることが出来ませんでした。
1回目の面接の終わりの時間がさしせまっていました。
専門家としてそのカウンセリング終わるまでに何か1つでも提案を提供したいと考えていました。
そこで彼は「生活の中でまた起こったらいいと思えることに注意していてください」と提案しました。
問題にマッチした解決法を提供できなかったにも関わらず、2週間後の次のカウンセリングで、家族は大変上手くいっていて、問題は解決したと報告しました。



シェイザーのグループはこの事実に衝撃を受けました。
ちょうど同じ頃、コミュニティ心理学者であるジュリアン・ラパポートは、次のような主張をしていました。
カウンセラーやソーシャルワーカーが扱う問題と医学が扱う疾病との間にはほとんど類似点がない。
カウンセラーやソーシャルワーカーが扱う問題の適切な解決像は、問題を持つ人の価値観、ニーズなどによってかわるので、唯一の解決像はない、というのです。
問題に対応したお決まりの解決策というものはないのだという考えです。



この主張を1993年にシェイザーやその仲間、インスー、デ・ヤングらは検証しました。
まずDSM-Ⅲ-Rという診断基準に則りクライエントの問題を分類しました。
その結果、気分変調症以外の問題には、このシェイザーらのやり方が極めて有効であることが分かりました。
平均すると、シェイザーらのカウンセリングを受けたクライエントの39%が目標を達成していて、40%が多少の進歩をしていて、合計すると79%の人がカウンセリングの恩恵を受けていることが分かりました。
通常のカウンセリングでは約66%程度ですので、13%も効果が高いことになります。



問題の分類のデータによると、カウンセリング終了時においては、60%から80%の解決率を示していました。
カウンセリング終了から7~9ヶ月後にはパニック発作以外の問題においては、治療効果が持続し、63%から89%にものぼる解決率を示していました。
性的虐待や身体的虐待、ひきこもりの問題においては、カウンセリング終了時から7~9月後にかけて解決率が11~13%も上昇していました。
治療効果が持続し、カウンセリング終了時には十分な効果が得られなかった人たちが、カウンセリングを受けた経験を元に変化を自ら生み出していました。



しかし、こうした結果は問題の把握や診断が不必要である、ということを示すことにはなりません。
気分変調症やパニック発作の問題においては、50%の人がカウンセリングの恩恵を受けられなかったことが分かりました。
他の問題においても、11%~37%の人が十分な恩恵を受けられていませんでした。
問題の把握が不十分なのか、診断が的確でなかったのか、それとも問題や診断とカウンセリングの方法のミスマッチがあったのか、この点は今後の研究が待たれています。



またさまざまな問題独自の二次的問題の存在も忘れることができません。
夫婦間の虐待のケースにおいては、夫から逃亡した妻が別居した直後に見つけられて懲罰のつもりで致死にまで及ぶ暴力を受けることがあることがわかっています。
このようなリスクを把握する上でも、問題の診断や状況の専門的な評価は非常に重要です。



ただ、問題がいつもなら起きるのに起こらなかったとき、問題がある時点で止んだとき、すなわち「例外」に注目するアプローチは、問題の種類によっては比較的短期間でかなりの効果をあらわすことが事実のようです。

広尾レディスカウンセリングルームでは、この方法によるカウンセリングを取り入れているカウンセラーが在籍しています。
興味のある方はお問い合わせ下さい。


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