身内の者。 | エニグマ/奇妙な話

エニグマ/奇妙な話

幽霊話ではない不可解な怪奇現象、怪談奇談の数々。
これらは全て実際に起こった出来事です。

この世界は、あなたが思っているようなモノではないのです。


ある有名ファミレスで店長をしている方から聞いた話。


彼が以前、副店長でいた店舗では
時おり、生首が床を

転げ走っていたのだという。

客を含め、店の者もほとんど気づかない。

何人かのうち一人の割合で、それを見た者は直後に青ざめて

強張っているので分かる
そうだ。

そういった者で客だったら慌てて店を出て行くか、

店の者だったら、曖昧な理由で辞めていった。


一体いつそれを目にするのか。

タイミングも、理由も分からない。


注文を取りにいったテーブルの下から…

清算中の客の背後を…

近所の奥さん連中で賑わう長閑なランチタイム…



そして閉店後、誰もいない店内をグルグル、グルグルと。



その店長も最初こそ薄気味悪く思ったが、慣れてしまった。

というより、その事に障らない方がいいように思ったという。



長い乱れ髪を振り乱しながら、転げまわるその生首の顔が

どう見ても自分の知っている”身内”の者にしか見えないのだ


一瞬で走り抜けるその顔をはっきり確かめたことはないのだが。

その身内は今でも健在である。

人当たりもよく、もちろんそのような不穏な事に関わるような人

ではない。

人徳者で、店長が最も尊敬する人物だという。

何故その人物に見えるのか、不思議で仕方ないそうだ。


彼の言う”身内”とは、血縁筋のことなのか、社内のことなのかは

言葉を濁していたため分からない。



いつも長い時間、
居座るのが日課の
ファミレスの店長さんから

急に告白された話。



この話で個人的にはなにが怖かったかというと、

何故その話を、このタイミングで私に?ということである。


思わず、床を見回してしまったことは言うまでもない…。