今考えると子供の頃当たり前のように行っていたことが
実に不思議なことだったという話は多い。
子供の現実とは、我々大人のものとは違うのだろうか。
またいつからその二つは一つに落ち着くのだろうか。
Rさんは幼い頃、小さなものを捕まえるのが得意だったという。
虫やトカゲなどではない。
遠くに見えるものである。
本人も説明するのが難しいとのことだったので、ここで正確な
ことを記せているか、聞いた私も不安ではあるが話からすると
「(遠近法で?)小さく見えるものを指でつまむようにして、ひょいと
掴む」
ということのようだ。
捕まえたそれらはどんなものだったのか聞いたが、現実に見えていた
そのままの感じで手の中にあったそうだ。
時々、人を捕まえることもあったが、彼らはたいていRさんの手の中
でうろうろするのだという。
車が好きだったRさんはよく気に入った車を捕まえていたらしい。
ただ彼が4、5歳の頃、飛行機を捕まえ損ねたことがあった。
飛行機の一部がパチンと指に引っかかった感触はいまでも残って
いるという。
その時ふいにそれが良くないことだと感じられて、それ以来小さなもの
をとることを止めてしまったそうだ。
いまから25、6年ほど前、80年代のことらしい。