手の中。 | エニグマ/奇妙な話

エニグマ/奇妙な話

幽霊話ではない不可解な怪奇現象、怪談奇談の数々。
これらは全て実際に起こった出来事です。

この世界は、あなたが思っているようなモノではないのです。

今考えると子供の頃当たり前のように行っていたことが

実に不思議なことだったという話は多い。

子供の現実とは、我々大人のものとは違うのだろうか。

またいつからその二つは一つに落ち着くのだろうか。


Rさんは幼い頃、小さなものを捕まえるのが得意だったという。

虫やトカゲなどではない。

遠くに見えるものである。

本人も説明するのが難しいとのことだったので、ここで正確な

ことを記せているか、聞いた私も不安ではあるが話からすると


「(遠近法で?)小さく見えるものを指でつまむようにして、ひょいと

掴む」


ということのようだ。


捕まえたそれらはどんなものだったのか聞いたが、現実に見えていた

そのままの感じで手の中にあったそうだ。

時々、人を捕まえることもあったが、彼らはたいていRさんの手の中

でうろうろするのだという。

車が好きだったRさんはよく気に入った車を捕まえていたらしい。


ただ彼が4、5歳の頃、飛行機を捕まえ損ねたことがあった。

飛行機の一部がパチンと指に引っかかった感触はいまでも残って

いるという。

その時ふいにそれが良くないことだと感じられて、それ以来小さなもの

をとることを止めてしまったそうだ。


いまから25、6年ほど前、80年代のことらしい。