＊編者注：歴史的なAAROを率いた初代カークパトリック局長は、努力した割には内部告発者による批判により世論の反発をかったと不満を持って退任した。次期局長はいまだに決まらずAAROの存在自体が薄れてきている。
ウェブサイトを公開して国内のUAP情報が溢れている割には、AAROから発表される情報は極端に少ない現状である。
所詮カークパトリックは影の機関の掌の上で踊らされている存在であり、知りうる情報も限られた検閲済みのものであったと考えられる。機密情報にアクセスできるセキュリティ・クリアランスも、どこまで持っていたか不明である。
●米国政府のUFOハンターとして私が学んだこと（前AARO局長退任後の意見）
米国防総省のある部署が発表した調査報告書によれば、エイリアンの証拠は見つからなかった。
BY SEAN KIRKPATRICK
2023年5月31日、NASAの未確認異常現象（UAP）独立調査チームの公開会合でプレゼンテーションを行う、国防総省のAARO全領域異常解決局長だったショーン・カークパトリック。
NASA/Joel Kowalsky
地球外生命：
カール・セーガンは、"並外れた主張には並外れた証拠が必要だ "という格言を広めた。この助言は、政策決定者にとってオプションであってはならない。誤った情報、陰謀論による意思決定、センセーショナリズムに支配された統治がまかり通る今日の世界では、合理的で証拠に基づいた批判的思考の能力が損なわれつつあり、複雑さを増し続ける課題に効果的に対処する私たちの能力にも悪影響を及ぼしている。
国防総省の全領域異常解決局（AARO）の局長として、UFOとしても知られる未確認異常現象（UAP）の信頼できる観測をめぐる長年の謎を、科学的根拠に基づいて解明し、解決する手助けをするよう2022年に議会から任命された私は、この浸食を間近で体験した。
そしてそれが、昨年12月に私がその職を退く決断をした一因でもあった。非常に優秀で意欲的なスタッフを集め、彼らとともに合理的、体系的、科学的根拠に基づいたこれらの現象を調査するための戦略を練り、苦労してチームを結成した後、私たちの努力は結局、センセーショナルだが裏付けのない主張に圧倒され、矛盾する証拠を無視しながらも政策立案者や一般市民の注目を集め、立法闘争を推進し、世論を支配した。
このような作り話、捏造、又聞き、又聞きによる再話が渦巻いた結果、ソーシャルメディアは熱狂し、議会や行政府はこれらの主張の調査に多大な時間とエネルギーを費やした。
陰謀論者のストーリーは次のようなものだ： アメリカは1960年代から、おそらくそれ以前から、12機ものUAP/UFOを隠し、リバースエンジニアリングを試みてきた。この大々的な隠蔽工作と陰謀は目立った成果を上げることができず、その結果、一部の民間防衛請負業者に作業を継続させることになった。
その後しばらくして、これらの民間業者は、このプログラム全体を米国政府（USG）の支援のもとに戻したいと考えた。どうやらCIAは、このUSGへの移管を止めたようだ。しかし、残念なことに、ある発言を信じるかどうかは、それが発信される量と繰り返される回数に比例するのであって、実際の事実とは関係ない。
この物語（この物語は、相互に結びついた信者や、おそらく正直な意図とは言えないかもしれない人々の小さなグループによって語られ、語り直されてきたが、このことについて直接説明した人は誰もいない）の本格的な一年にわたる調査中に、AAROは次のことを発見した。 いくつかの内容がありましたが、エイリアンに関するものはありませんでした。
まず、大統領や国防総省、情報機関の指導者がこの疑惑のプログラムについて知っていたという記録はなく、議会の委員会もそのような知識を持っていなかった。というのも、このような重要なプログラムが、数十年にわたって米国政府上層部の50人から100人に説明されなかったとは考えられないからである。
第二に、このシナリオは何年も煮えたぎっており、国防総省の国防情報局（DIA）の「先進航空宇宙脅威特定プログラム（AATIP）」と呼ばれるかつてのプログラムから派生したもので、実業家で長年のUFO研究家であるビゲロー・エアロスペース社の創設者ロバート・ビゲローに関連する個人グループによって大きな影響を受けている。
2009年、当時の上院議員ハリー・リードは国防長官（SECDEF）に対し、AATIP推進派が米国政府が隠していると考えていたUAP/UFOの疑惑資料を保護するためにSAP（特別アクセスプログラム）を設置するよう要請した。国防次官情報局（OUSDI）とDIAによる検討の結果、そのような資料は存在しないだけでなく、ユタ州のスキンウォーカー牧場での超常現象研究に税金が不適切に使われているとの結論が出されたため、SECDEFはこれを拒否した。
このことは、公開情報源、特にDIAの電子情報公開閲覧室で閲覧可能な記録によく記録されている。SECDEFによる否定的な回答の後、リード上院議員は当時のジョセフ・リーバーマン上院議員の協力を得て、同じ目的のために国土安全保障省（DHS）にSAPを設置するよう要請した。行政SAPの提案パッケージは、AATIPと関係のあった同じ人物によって知らされた。AAROのアーカイブ調査により、DHSのSAPに関する行政提案書（参加者を含む）が発見された。
最後に、このシナリオの主要人物たちは、数十年来の知り合いである。2000年代初めには、この小さなグループのメンバー数人が、ホワイトハウスが主催したと（同じ参加者によって）誤って説明された、地球外生命体の存在を一般に公表することが社会に与える影響についての研究にも参加していた。問題のシンクタンクは、しばしばフリンジ研究を手がける "先物 "企業であり、この研究に携わった人物の多くは、AATIPプログラムをサポートするビゲロー・エアロスペース社でも働いていた。
AAROは、現代のUAP観測を技術的に評価するだけでなく、1940年代にさかのぼる歴史的な記述も見直すという、議会に義務付けられた任務の一環として、これらの主張を徹底的に調査した。
引退前の私の最後の行動のひとつは、AAROの歴史的記録報告書第1巻に署名することであった。この報告書は、上記のような疑惑の多くが、地球外生命体問題や技術とは無関係な、合法的な米国のプログラムや関連する研究開発について、不注意あるいは無許可で開示されたものであることを示している。あるものは虚偽の説明であり、あるものは純粋で裏付けのない信念に由来するものである。多くの点で、この物語は循環報告の教科書的な例であり、各人が聞いたことを伝えているが、情報は最終的に同じ小グループの個人に由来することが多い。
議会がAAROに課した作戦任務は重要である。高度な訓練を受けた米軍やその他の信頼できる要員による、国家安全保障上重要な地域や活動の近くでの未確認の異常現象の観測を積み重ねることは、何が起こっているのかを理解するための真剣な努力を必要とする。簡単に言えば、特に地政学的緊張が高まっている今、「未確認」は容認できないということだ。
しかし、今日私たちが直面している問題のひとつは、現代のメディア・サイクルが、健全な研究、科学、ピアレビューの時間軸がそれを検証するよりも早く、ストーリーを駆り立てていることである。さらに憂慮すべきは、裏付けとなる証拠を見たり要求したりすることなく、このような記事に基づいて判断を下し、行動を起こそうとする人々がいることである。議員の中には、この問題について証拠に基づく説明を受けるよりも、報道陣に宇宙人について意見を述べることを好む者もいる。議員には、スポットライトを浴びようとするのではなく、批判的思考力を発揮する責任がある。
私が去った時点で、世間で陰謀論を唱える "内部告発者 "たちは、何度も招待されたにもかかわらず、誰ひとりとしてAAROに来て "証拠 "と記録を提出することを選ばなかった。彼らや彼らのプライバシー、情報を保護し、調査し、結果を報告するために、あらゆる法的手続きとセキュリティの枠組みが確立された、法律で設立された組織に証拠を持ち込むよりも、むしろ世間の注目を浴びるセンセーショナルなことを望む者は疑わしい。
AAROは、科学とテクノロジーを駆使して、これらの魅力的で重要かつ頑固な謎をかつてないほど明確にし、最大限の透明性をもってそれを実現することに、揺るぎなく取り組んでいることを、私は前局長として断言できる。
AAROの優秀なスタッフと科学者チームは、軍隊、情報機関、政府機関、国立研究所、科学界、学術界、そしてやがて一般市民と協力し、これまで目撃者は多かったがデータの乏しかったこの分野で、測定可能なデータ、つまり特別な証拠を収集・分析するために、今まさに奮闘している。
AAROのチームは、データがあればどこへでも行くつもりであり、調査結果に影響を与えようとするいかなる試みにも屈しない。科学は、陰謀を暴こうと躍起になるあまり、道端に置き去りにすることはできない。カール・セーガンも、そしてアメリカ国民も、それを期待しているはずだ。
本記事は意見および分析記事であり、筆者または著者によって表明された見解は、必ずしもScientific Americanのものではありません。
権利と許可
SEAN KIRKPATRICKは最近、米国防総省のAARO全領域異常解決オフィスの初代ディレクターとして連邦政府を退職した。ジョージア大学で物理学の博士号を取得。
OPINION scientific american
JANUARY 19, 2024
6 MIN READ
●Here’s What I Learned as the U.S. Government’s UFO Hunter
A forthcoming investigational report from an office of the Pentagon has found no evidence of aliens, only allegations circulated repeatedly by UFO claim advocates
Sean Kirkpatrick, then-director of All-Domain Anomaly Resolution Office at the Department of Defense, gives a presentation at a public meeting of NASA’s unidentified anomalous phenomena (UAP) independent study team on May 31, 2023.
Credit:Carl Sagan popularized the maxim that “extraordinary claims require extraordinary evidence.” This advice should not be optional for policy makers. In today’s world of misinformation, conspiracy driven decision-making and sensationalist-dominated governance, our capacity for rational, evidence-based critical thinking is eroding, with deleterious consequences for our ability to effectively deal with multiplying challenges of ever increasing complexity.
As director of the Department of Defense’s All-Domain Anomaly Resolution Office (AARO), charged by Congress in 2022 to help bring science-based clarity and resolution to the long-standing mystery surrounding credible observations of unidentified anomalous phenomena (UAP), also known as UFOs, I experienced this erosion up close and personal. And it was one factor in my decision to step down from my position last December. After painstakingly assembling a team of highly talented and motivated personnel and working with them to develop a rational, systematic and science-based strategy to investigate these phenomena, our efforts were ultimately overwhelmed by sensational but unsupported claims that ignored contradictory evidence yet captured the attention of policy makers and the public, driving legislative battles and dominating the public narrative.
The result of this whirlwind of tall tales, fabrication and secondhand or thirdhand retellings of the same, was a social media frenzy and a significant amount of congressional and executive time and energy spent on investigating these so-called claims—as if we didn’t have anything better to do.
The conspiracists’ story goes something like this: The U.S. has been hiding and attempting to reverse engineer as many as 12 UAP/UFOs from as early as the 1960s and perhaps earlier. This great cover-up and conspiracy failed to produce any salient results, and consequently the effort was abandoned to some private sector defense contractors to continue the work. Sometime later, the story continues, those private sector contractors wanted to bring the whole program back under U.S. government (USG) auspices. Apparently, the CIA stopped this supposed transfer back to the USG. All of this is without substantiating evidence, but, alas, belief in a statement is directly proportional to the volume in which it is transmitted and the number of times it is repeated, not the actual facts.
During a full-scale, year-long investigation of this story (which has been told and retold by a small group of interconnected believers and others with possibly less than honest intentions—none of whom have firsthand accounts of any of this), AARO discovered a few things, and none were about aliens.
First, no record exists of any president or living DOD or intelligence community leader knowing about this alleged program, nor any congressional committee having such knowledge. This should speak volumes if this case were following typical procedure because it is inconceivable that a program of such import would not ever have been briefed to the 50 to 100 people at the top of the USG over the decades of its existence.
Second, this narrative has been simmering for years and is largely an outgrowth of a former program at the DOD’s Defense Intelligence Agency (DIA) called the Advanced Aerospace Threat Identification Program (AATIP), which was heavily influenced by a group of individuals associated with businessman and longtime ufologist Robert Bigelow, founder of Bigelow Aerospace. In 2009 then senator Harry Reid asked the secretary of defense (SECDEF) to set up a SAP (special access program) to protect the alleged UAP/UFO material that AATIP proponents believed the USG was hiding. The SECDEF declined to do so after a review by the Office of the Undersecretary of Defense for Intelligence (OUSDI), and DIA concluded that not only did no such material exist, but taxpayer money was being inappropriately spent on paranormal research at Skinwalker Ranch in Utah. This is well documented in open sources, particularly in records available on DIA’s electronic FOIA Reading Room. After the negative response by SECDEF, Senator Reid then enlisted the help of then senator Joseph Lieberman to request that the Department of Homeland Security (DHS) set up an SAP for the same purpose. The administrative SAP proposal package was informed by the same individuals who had been associated with AATIP. AARO’s archival research has located the administrative proposal for the DHS SAP, complete with the participants, which has been declassified and is being reviewed for public release.
AARO thoroughly investigated these claims as part of its congressionally mandated mission to not only technically evaluate contemporary UAP observations but also review historical accounts going back to the 1940s. One of my last acts before retiring was to sign AARO’s Historical Record Report Volume 1, which is currently being prepared for delivery to Congress and the public. The report demonstrates that many of the circulating allegations described above derive from inadvertent or unauthorized disclosures of legitimate U.S. programs or related R&D that have nothing to do with extraterrestrial issues or technology. Some are misrepresentations, and some derive from pure, unsupported beliefs. In many respects, the narrative is a textbook example of circular reporting, with each person relaying what they heard, but the information often ultimately being sourced to the same small group of individuals.
The operational mission Congress has assigned AARO is important. Accumulating observations by highly trained U.S. military and other credible personnel of unidentified anomalous phenomena at or near sensitive national security areas and activities calls for a serious effort to understand what’s going on. Simply put, “unidentified” is unacceptable, particularly in these times of heightened geopolitical tension. Part of the problem we face today, however, is that the modern media cycle drives stories faster than sound research, science and peer review time lines can validate them. More worrisome is the willingness of some to make judgments and take actions on these stories without having seen or even requested supporting evidence, an omission that is all the more problematic when the claims are so extraordinary. Some members of Congress prefer to opine about aliens to the press rather than get an evidence-based briefing on the matter. Members have a responsibility to exhibit critical thinking skills instead of seeking the spotlight. As of the time of my departure, none, let me repeat, none of the conspiracy-minded “whistleblowers” in the public eye had elected to come to AARO to provide their “evidence” and statement for the record despite numerous invitations. Anyone that would rather be sensationalist in the public eye than bring their evidence to the one organization established in law with all of the legal process and security framework established to protect them, their privacy, and the information and to investigate and report out findings is suspect.
I can assure you as its former director that AARO is unwaveringly committed to harnessing science and technology to bring unprecedented clarity to these fascinating, important, and stubborn mysteries and to do so with maximum transparency. Its talented staff and team of supporting scientists are at this very moment striving in collaboration with the armed forces, intelligence community, government agencies, national laboratories, scientific community, academic community—and soon the general public—to collect and analyze hard, measurable data—i.e., extraordinary evidence—in this heretofore eyewitness-rich but data-poor field. The AARO team will go wherever the data takes it, without fail, and will not be swayed by any attempts to influence its findings otherwise. Science cannot be left on the side of the road in the mad dash to uncover some great conspiracy. Carl Sagan would expect no less, and neither should the American people.
This is an opinion and analysis article, and the views expressed by the author or authors are not necessarily those of Scientific American.