私の好きな、「よそではこうだよ系」の本です。近所の図書室で出会いました。2020年の出版です。これは学ぶところの沢山ある良い著作でした。表紙にあるように、フィンランドは4年連続で幸福度ランキング世界1位だそうです。筆者がさまざまな面から、日本で暮らす人が取り入れるとよい部分を紹介してくれ、日本のこれからの在り方に資することを狙って書かれたようです。

上記のランキングでは、「自分にとって最良の人生から最悪の人生の間を0から10で分けた時、今、自分はどの段階にいると感じるか」という質問を各国の人にしています。この本では直接、関連に触れていませんでしたが、報道の自由や移動の自由で高い評価をフィンランドが受けていることも大切な点だと私は思います。

政府を批判するような情報に触れる機会が極めて少ない国では、貧困や人権侵害があったとしても、自分たちの国はいい国だと思い込まされている、ということもあるでしょうからね。短波ラジオの所有が禁止されてた戦中の日本もまさにそれだと私は思っています。今も知る権利が尊重されていない、報道の自由ランキング下位の国も世界にはありますね。

そして子供の貧困率はフィンランドが3.7%に対して、日本は15.8%。日本はかなり高く感じます。母子家庭の子供が進学をあきらめたり、また、奨学金という名の借金を子供がさせられて、苦しんでいるという報道も最近の日本ではよく目にします。

それでもフィンランドが昔から順調だったのではないようです。100年前はヨーロッパの中でもかなり貧しい国の一つだったそう。多くの困難に直面しながらも、克服し、成長してきた結果のようです。

現地に住んでみて筆者が感じたのは、あくせくした感じや、ガツガツした感じが少なく、どことなくゆとりを感じさせる暮らしがある、のだそうです。

また、日本の友人たちが子育てと仕事の両立に悩み、男女の役割分担でストレスを感じている姿や、プライベートがほとんどなく長時間労働で身も心もすり減らしている姿を見ていると、「他の国ではこういう働き方があるんだよ」「もっとバランスをとって人間らしい生活を望んでもいいんだよ」と伝えたくなる、とのことでした。

休むことも社会人の権利、という認識もフィンランドでは広く共有されているようです。

フィンランド語のタウコは、休憩という意味ですが、エクササイズの意であるユンパと組み合わせたタウコユンパというものも職場で行われています。休憩時間をいかに効果的にとるかを考えてなされているもので、5分ほどのストレッチや軽い運動をするそう。他にもカハヴィタウコ(=コーヒー休憩)も、労働者に取らせることが、法律で決められているらしいです。これらはいい息抜きになるでしょうね。

効率のいい働き方をフィンランドは追求しているようですが、いくら効率を高めても、決まった時間内でたくさんの仕事の全てをこなすことは、残念ながら難しいです。常に優先順位を考え、重要度や緊急性の高いものからこなしていく必要がある。この辺は日本でも認識されていると思います。それでも折に触れて、すべきことリスト、したいことリストを作り、目を通して、全体像をつかんでおくことは欠かせないでしょうね。

フィンランドの職場では、肩書とは関係なしに意見の交換ができ、オープンでフラットな組織が多いとのこと。

マリン首相の例もあるように、フィンランドでは、最近は女性が責任のある立場に立つことも増えてきたようです。ジェンダーギャップ指数で下位に低迷し続け、女性に冷たい社会の日本は、学ぶべきところが多い領域でしょうね。バイク好きな私は、以前見かけたマリン首相の写った画像で、Wのライダースジャケットを着ているのを見て親近感を覚え、なんだかうれしかったです。流行だから着ていただけで、彼女がバイクに乗るわけではないのかもしれませんが。

新聞記者や雑誌記者は大抵の国にいますが、夜討ち朝駆けを当然と思って受け入れろ、位に思ってそうな日本と違い、フィンランドでは、就業時間以外に自分のプライベートの時間を犠牲にしてまで働くことはほぼ無いのだそうです。

ハラスメントはそれでもフィンランドにも存在するようですが、もともと権利意識が強く、労働組合も強いため、泣き寝入りせず、公に訴える人たちは日本より多いと感じるそうです。

父親の8割がフィンランドでは育休をとる。

フィンランドの人は、仕事は好きだけど、それ以外の時間も大切にする。

子供も18才になったら家を出て自立するのがフィンランドでは当然。

サウナはフィンランド語。

フィンランドの全ての社会人では、4週間連続の夏季休暇をとれていないのは、わずか27%。これは日本との差が大きいです。

フィンランドでは社員の募集時やインターンの募集時に、近頃では動画でアピールするのが主流らしい。30秒から1分で簡潔に自分のプレゼンをする。この辺は私も、新しい社会の動向にしり込みせず、挑戦していかないといけないかも、と思わされました。

おすすめの休みの過ごし方を10個挙げていましたが、街で人間観察というのは私も学生時代から好きでよくやっていましたね。特に東京や大阪、名古屋、京都、金沢などの都市で、繁華街や駅で長いこと通行人を眺めているのが楽しく、服装や髪形やメイクで人々の多様性を感じられる、お気に入りの時間でした。今も観察時々してます。

仕事も、家庭も、趣味も、勉強も、貪欲に。勉強することで、引き出しを多く持つ。特に女性が貪欲と感じることが多かったそう。

時にどんなに頑張っても、石を砕こうとしても、ダメな時もある。そういった時には、助けを求める勇気を持つことも必要だ。

自力でどうにかする。無理をしない範囲で、自分で工夫したり、しらべたりして、ということでしょう。

とにかくウジウジ考えているよりは、行動あるのみ。

偏差値や学歴で判断しない。

フィンランド人は一人の時間も楽しむ。

フィンランドでは、買い手側、消費者側も成熟してきて、エコに対して非常に意識が高くなってきている。アップサイクルの、決して安くないものも売れるようになってきたそう。これは小学校と中学校が一緒だった友人の、小林努くんにも伝えたいと思いました。彼は和服の帯から、バッグを自分で作っています。家は100mの近さ。

世界一のワーキングライフ(仕事+人生)を目指すと、フィンランドは2019年に発表。

簡単に「日本は違うから」と諦めてほしくないし、今の筆者自身がそうであるように、日本の枠組みの中でも全体の意識が変わることで実現できることはたくさんあると信じているそうです。これは私も賛成。

総じて言えば、繰り返しになりますが、いい本だったと思います。やっぱ読書ってたのしいなー。図書室へ返却した後、ほかの誰かにも、楽しんで読んで欲しいと感じています。