私にとっては、新しい視点に立って、この世の中を捉えさせてくれた、ちょっと素敵な書籍でした。本屋でたまたま見つけての購入です。よかった箇所の抜粋を以下に記します。

「私たちも皆、いずれは未来に生まれてくる人たちにとっての祖先になる。その時に、未来の人たちに、私たちがよき祖先と思ってもらえるかどうか。負の遺産を残した悪い祖先として記憶されないよう、よき祖先になるには今どう行動すればいいのか」、というのが著者の意図だと、訳者のあとがきにありました。

短期主義に引きずり込む力としては、テクノロジーに乗っ取られる注意散漫な意識や、次の選挙ばかり気にかける近視眼的な政治、終わりのない経済成長の追求など。逆に長期思考へとつながる方法としては、宇宙空間における瞬きの存在である自覚を持つ、7世代先まで考えて世代間の公正を追究する、人間の寿命を越えた大聖堂建築のようなプロジェクトを計画する、などが挙げられていました。

人間はどのようにして「長く考えられる脳」を育てたのか、については以下の4つを列挙しています。1)道順を見つける力 2)長生きしたおばあちゃんにケアを提供されていたこと 3)社会的協力 4)道具のイノベーション。

ひとつ、簡単だけどうまい思い付きだなと私が感じたことがあります。それは時間に関する想像力を「今、ここ」をはるかに超えて拡大させる工夫です。何かというと、日付を書くたびに、年の前にゼロを置くというものです。今でいえば2023年ではなく、02023年と、そうすると確かに何万年も先の未来を想像し始めることができますね。これはやってみよう。

現在主義政治の最大の問題は、代表制民主主義が未来の人々の利益を組織的に無視していることにある、とも。未来の世代が選挙権を奪われていることには、確かにまったく思い至りませんでした。

一般市民をくじ引きで選ぶ、市民議会への期待もつづっていました。

若者の気候変動ストライキのような反政府運動が、政府へ与えた圧力を思えば、彼らのパイオニア精神に信頼を置いてみてもよいのでは、ともありました。

システム思考も現在は世界中の学校や大学で教えられており、ストックホルム・レジリエンス・センターが提供している「惑星の限界と人間の機会 Planetary Boundaries and Human Opportunities」のように、長期的な視点で物事を考えることができるシステム思考を、オンライン講義で無料で学ぶことができるそうです。