気が付いたら丸々二週間も
映画館に行ってませんでした。
仕事も繁忙期だし
映画も新作の劇場公開が滞る
年末年始なので致し方ありません。
と云う訳で
2016年の初映画は、
スティーヴン・スピルバーグ 監督最新作
ブリッジ・オブ・スパイ
BRIDGE OF SPIES
を観て来ました。
じっくりジワジワ染みてくる映画。
そして紛れもなくハリウッド大作の風格を備え
スピルバーグだからこそ撮れる余裕が
作品の隅々に伺える安住のエンターテイメント作品です。
イーサン&ジュエル・コーエン兄弟の巧みで気の利いた脚本を得て
もはやスピルバーグの盟友と言っても過言ではないトム・ハンクスの登板に
安定この上ない落ち着いた画を魅せるヤヌス・カミンスキー撮影監督の職人技然り
もう非の打ち所がないコラボレーションの極みです。
ただ残念なのが、
「 続・激突! カージャック 」以来、
スピルバーグ作品には欠かせない言わば専任作曲家である
ジョン・ウィリアムズ御大とのタッグが本作で途絶えたことです。
なんでも彼の健康上の問題で途中降板して
止む無くトーマス・ニューマンと交代したそうですが、
先日のSWのワールドプレミアには、元気な姿で登場されていたので安心しました。
冷戦時代の実話で
捕虜となっていた米ソのスパイ交換に貢献し
その交渉役の立役者となったは、
政府の役人ではない
トム・ハンクス演じる
一般の弁護士ジェームズ・B・ドノバンだったと云う逸話を
2時間22分の長尺の中に
緊迫感が途絶えない構成と
俳優陣の好演が絶妙に混ぜ合わされ
ブルックリンやベルリンの当時の街並を見事に再現した
オープン・セットとVFXの融合で綿密に描きます。
東西ドイツを分断するベルリンの壁が正に造られているその過程を
単に背景模写として思いの外サラッと見せるのですが、
よく見ると細部にまで拘ったその映像の凄さは、
予算を掛けなくては到底再現不可能なものであり
今までスピルバーグが映画界に貢献してきた実績を暗黙のうちに物語っています。
それは、自分の創りたい映画を自由に撮れる類稀なるハリウッドの監督である証なのです。
そこには、もはや事実上は賞レースなんてどうでもいい余裕と貫禄が滲み出ます。
米国に捕まったソ連のスパイであるアベルを演じる
マーク・ライランス が、味わいのある演技で出色。
口癖の「 それが役にたつのか? 」の台詞に込められる色々が
クライマックスの比喩模写にググッと効いてきます。
骨格はサスペンス・スリラーの娯楽作なのですが、
そこに歴史、伝記、戦争、政治、スパイ、アクションに
人間ドラマが重厚に絡んでくる
これはスティーヴン・スピルバーグの集大成であり
ひとつの到達点とも云える魅力に富んだ作品になりました。
スピルバーグ・フリークと云う自分の云々を差し引いても
これは、珠玉の逸品だと思います。