「ゴジラー1・0(マイナス・ワン)」がアカデミーのVFX賞を受賞したのを機に、「VFXって何ですか?」と質問された。そこで今回は、この〝VFX〟という映画語句を紐解いてみよう。

 

 〝VFX〟はかつては〝SFX〟と呼ばれていた。それが一般化されたのは、「スター・ウォーズ」(1977年)や「未知との遭遇」(同年)が登場してからである。〝SFX〟の〝S〟が〝スペシャル〟であることはおおよそ想像がつく。しかし〝FX〟が何か?と問われて、すぐに説明できる人は、相当の通だろう。

 

 答えは〝EFFECTS(効果)〟で、「エフェクツ、エフェクツ…」と繰り返し言っていると、「FX」に聞こえることから、この名がある。つまり〝SFX〟とは〝特殊効果〟の略語で、日本では〝特殊撮影(特撮)〟とも呼ばれている。合成、ミニチュア、アニメというSFXの三大技術を駆使して、実写とは異なる特殊な画像を作ることから名づけられた。日本では「ゴジラ」第1作(54年)を創始した〝東宝特撮部〟が世界的に有名で、この作品の圧倒的な成功によって、それを率いる円谷英二は、特撮監督として、一枚看板でクレジット・タイトルに記されるようになった。

 

 ところが21世紀になってからは、デジタル技術の発達によって、一般的な映画でも、実際の映像に後処理技術を施すのが通常となった。つまり、もはや特殊ではなくなったのである。そこで〝VISUL EFFECTS〟、即ち〝VFX(視覚効果)〟という名前の方が使われ始めたのだ。

 

 ちなみに、映画は音と映像。視覚があれば聴覚もあるじゃないかという発想で作られた対語が〝SOUND EFFECTS(音響効果)〟だ。この言葉は〝S・E(効果音)〟という言葉に略され、ラジオやテレビ業界では現在でもさかんに使われている。

 

 さて、そのVFXを派手に使ったハリウッド大作が、本日から公開される。「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」がそれ。地球を襲うさまざまな幽霊を退治する「ゴ―スト・バスターズ」シリーズも本作で4作目。今回の敵は、ニューヨークを氷河期さながらの氷の世界にしてしまうガラッタ。バスターズとして活動するスぺングラー一家は、ゴースト研究所の調査チームと協力し、この最強ゴーストと対決する。第1作(84年)に登場した初代バスターズの博士たち(ビル・マーレイ他)も加勢し、にぎやかな限り。

 

 ところで、ハリウッドと日本のVFXの画像が微妙に違うことはご存じだろうか? 「夢」(90年)はスティーヴン・スピルバーグがプロデュースしたアメリカ資本の映画。そのため、VFXは、ジョージ・ルーカスが主宰する〝ILM〟に発注しなければならなかった。その際、黒澤明監督は、「森の映像を作らせると、どうしてもディズニーアニメ風の森になってしまう」とぼやいていた。

 

 ハリウッドの映像は、セル・アニメに描いたようにベタッと平面的になってしまう。それに対して、日本の映像は立体的でふくよかな点が特徴だといえる。「ゴーストバスターズ/フローズン・サマー」公開を機に、「ゴジラー1・0」のVFXと比べてみるのも、一興かもしれない。