- 伝説の灘校教師が教える 一生役立つ 学ぶ力/日本実業出版社

- ¥1,365
- Amazon.co.jp
すぐ役立つことは、すぐ役立たなくなる。
もっと横道にそれてみよう・・・・・
灘校一筋50年、そして人生100年の
伝説の教師として語りつがれる橋本武が
授業を通して、教え子たちに
本当に伝えたかったこと。
この本、読みかけでずっと放置していたのですが、最近になって開いて見ると
とてもおもしろくて、また最初から読んでみているところです。
「私は、平成24年の7月で100歳になります。そのうちのちょうど半分、50年も
の長きにわたって、兵庫県の私立灘中学校・高等学校で国語の教師を務め
てきました。
灘校は、全国屈指の進学校にして、世間からはガリ勉というイメージを持た
れていますが、実際の校風は自由そのもの。教師もおのおのが思い思いの
授業スタイルで生徒を育てているのです。
その中で、私が選んだ教育方法のひとつが、教科書を一切使わず、中勘助
の小説『銀の匙』を3年かけてじっくり読み込むという授業法。
実際に、小説の中で登場した凧揚げや、百人一首ではかるた大会を授業
時間に行うなど、「横道」にそれることによって、子どもたちに学ぶ楽しみ、
面白さを感じてほしいと願って、そのような常識にとらわれない授業を行っ
てきたわけです。
これが、教え子のひとり、現・神奈川県知事の黒岩祐治君が執筆した『恩師
の条件』、ついでNHKのテレビ番組での放送、そして教え子たちを取材した
『奇跡の教室』の出版というように、時間を追うごとに、いわゆる「スローリー
ディング」として大きく世間の話題を呼ぶこととなりました。
私はこれを本当にうれしく思っています。ガリ勉、詰め込み教育の最右翼と
いう灘校に対する偏見をものの見事に打ち破ってくれたこともさることながら
何より、私の授業がいまだに教え子たちの胸の中で生きていたことを教えて
くれたからです。」
「子どもは「遊ぶ気持ちで学ぶ」やり方がわからないわけですから、自然にそう
思わせる方向に導かなければなりません。
それが、「大人の教える力」、教師で言うなら「授業をする力」と言えるでしょう。」
子供は本来、好奇心の塊です。
知りたい意欲が旺盛な時期を活かせれば、どんどん吸収できます。
ただ、知りたくもないこと、興味の湧かないことをいくら覚えようとしても無理な話。
嫌いな勉強がますます嫌いになってしまいます。
でも学ぶことが、どんなに楽しいことか、知ってしまえば苦じゃなくなります。
私も子供の頃、丸暗記するのがいやでした。
意味もわからず、必要性も感じられずにまる覚えなんて、苦痛に思えました。
数学の授業で、方程式の意味を説明されている時は「なるほど~」と思っていても
実際に使うとなると、パターンをつかむまで練習問題を繰り返し、意味など忘れる
くらい頭に叩き込まなくてはなりません。
社会科の地理や歴史の年表も覚えたくありませんでした。
めんどくさがり屋なのと理屈っぽさが、私を勉強から遠ざけました。
でも好奇心は今でも旺盛です。
仕事でなにが楽しいかというと、以前の経験と新たな経験が結びつき、全てが
つながっていくことです。
それを発見するのが楽しいのです。
気づきを得ること。
だから、この先生の授業方法は、どんどんどんどん広くいろんなものにつなげ、
結び付けて、自分で発見する喜びを教えることなのです。
好奇心を封じ込めては、せっかくの意欲が台無しです。
それなのに一般的な学校で行われている、意味もなく詰め込む「勉強」は、子供
本来の能力を死なせるやり方だと思います。
だから無気力な顔で、ゲームばっかりやるようになるのではないでしょうか。
何を見ても、だからどうしたっていう顔をして感動しない人間になっていくのでは?
発見する喜びを知れば、自分の内側から意欲はどんどん湧いてきます。
人間は「知りたい」生き物です。
二宮金次郎さんだって子供の頃から肉体労働を強いられながらも本にかじりつき
ヘレンケラーだって目も見えず耳も聞こえないのにどんなことをしてでも勉強した
かったのです。
「こんな世の中に生まれてしまった
」と絶望するのも人生。
「発見することが山ほどある
」とワクワクするのも人生。
100年も現役の先生の授業が、この本を読めば受けられます。
「新聞などをたまに読むと、殺人事件や戦争など凄惨なニュースばかり。
そもそも地球自体、大して広くもないのに、今日もあちらこちらで戦争が行われて
います。しかし、私からすれば地球自体が一種の生き物。日本はもとより、たとえ
ばアメリカだって地震が起きますし、世界のどこでだって自然災害が起きてもおか
しくありません。
だから、本来なら地球のことを放っぽりだして戦争をしているヒマなどないはず
です。人間同士がもっと反省し、より一致団結して地球のことを考えなければ
ならないでしょう。
とにかく、地球が死んだら人間は生きられません。第一、周りを空気が覆っている
星はほかにありませんし、私に言わせれば、地球が空気に包まれていると
いうだけでも、十分不思議であり、十二分に奇跡なのです。
もちろん、無限に広い宇宙には、地球と同じような星があるかもしれませんが、
今すぐ、そこへ移り住めるわけではありません。しかも、そこにもやはり人間と
同じような生き物が住んでいて、人間と同じようにケンカばっかりしているかも
しれませんし・・・。
地球の人間には、もっともっとそういうところに目覚めてほしいと、戦争、震災とも
に体験した身として切に思います。」