(…続き)


その居酒屋は、

風変わりな看板の目立つ店構えで、

すぐに見つかった。


高知大学を卒業する間、

高知の風土に育てられたからか、

めっぽう酒に強い女性から紹介してもらった店だ。


入口の横には大きな窓ガラスがある。

ガラスの向こうで、藁を焼いて鰹をいぶしている。

店の入り口では、まだ7時前だというのに、

空席待ちの若い男女が4、5人。

その店が繁盛しているのがよく分かる。


予約しておいて良かった…。

1、2階席がほとんど満席なのを見て、

あらためてそう思った。

3階の小部屋に案内してくれる。


戻り鰹は9月からなの…?

藁焼きなんだろうね…?

冷酒の銘柄は…?

鰹のたたきのほかに…?


予約の電話で、あれやこれやの質問や注文に、

嫌な応対もせずつきあってくれた。

その店長が、部屋まで挨拶に来た。


「土佐のいごっそう 亀次」

また行きたくなるような、いい店だった。


「焼き切り塩たたき」は、

藁で焼いたばかりでまだ温かい鰹のたたき。

これを黒潮町の天火塩をつけて食べる。

旨いっ!


他の料理も、本当に美味しかった。

地酒も冷酒で、いったい何本飲んだだろう。


飲み放題付で、5000円のコース。

申し分なしの夕食となった。


もうこれで今回の旅行目的は達成と言えるほど、

美味い料理とお酒を堪能させてもらった。


二次会は、あらかじめ電話予約していたスナック。


♪高知の城下に来てみいや~

♪ジンバもバンバもよう踊る、よう踊る~

♪鳴子両手によう踊る、よう踊る~


郷土色豊かな唄、「よさこい鳴子踊り」

店のママと女の子が歌う。


ん?!

しばてんの手ぬぐいを被って、

ママと女の子と一緒に踊っているのは、

われわれのメンバーのアイドル、○○ちゃん!


いつも、唄って、踊ってのメンバーではあるが、

もう地元国東で飲んでるのと変わらない。


しばてん

  (「土佐のまんまる」 から、

      「しばてん踊り」の画像を拝借)



鳴子片手に、いつもの賑やかな二次会。

かくして、高知の夜は更けていった…


翌朝は、8時半ホテル出発。


高知市内、ひろめ市場と高知城を巡って、

四万十川の遊船に揺られて昼食をとり、

夜遅く、国東半島に戻って来る予定であった。


が、前夜の勢いも萎れた一行は、

高知城内を歩く元気などあるはずもない。

ただ、二次会で盛り上がった、

しばてんの手ぬぐいを買いたいと、

ひろめ市場だけに立ち寄って、高知市内を離れた。


道中、車の中で居眠りして英気を養い、

日本最後の清流、四万十川にさしかかる頃は、

きっと元気も戻っている…はずであった。


途中トイレ休憩に立ち寄った道の駅で、携帯が鳴った。

予約していた九四フェリーからであった。


「台風15号の影響で、

 お客様ご予約の便は欠航が決まりました。

 早めの便であれば、

 予約車優先で乗船できます。」


四万十川の遊船に浮かんで、

四万十の川魚料理に現(ウツツ)を抜かしていては、

当然間に合うはずはない。


でもまだ、高知県では台風の前触れなど微塵も感じない。

雨も降っていないし、そう強い風も吹いていない。


フェリーに乗れなくても、四国と中国地方とは橋があるじゃないか。


陸路を帰るコースが、頭に浮ぶ。


四万十川の遊船で昼食をすませた後、

松山道、しまなみ海道を通って、広島県尾道に渡り、

山陽道を広島、山口、下関へ。

関門海峡を渡って九州入り。

東九州道で大分県に戻るというコースを思い浮かべていた。


でも…、

わが家に帰り着くのは、深夜になるか…


「四万十川は、次回に残そうよ!

 また、鰹のたたきを食べに来よっ!」


誰かの言葉で、冷静になれた。

台風が接近している。

高速道や関門海峡の交通規制も、充分考えられる。


そうだな…

今回の旅行の目的は、藁焼きのかつおのたたき。

土佐の高知で酔いしれて…だった。

もうすでに、充分目的は果たしている。


窪川から、国道381号、320号を走って、三間ICに直行する。

途中、大正とか昭和とか聞きなれない地名を通過する。

こんなことがないと通らない道だ。


午後2時、無事に三崎港に着いた。

おかげで、欠航前のフェリーに無事に乗ることができ、

予定より早く帰宅することができた。


さて、近々「反省会」を開く。


土佐の高知の「しばてん」と、

藁やき鰹のたたきを話題に、

また盛り上がること…必至である。