水郷日田の夏は、川開き観光祭で始まる。
先日の日曜日。
日田は30℃を超えた。
ムシムシして、梅雨入り前だというのに、もう真夏のような暑さ。
とある販売店会の店主会が、日田で開催された。
昨年、危険物安全協会の会長さんたちと、
天領日田の川開き観光祭を心ゆくまで楽しんで、
すっかり病みつきとなったQとんの提案である。
店主会の総会は、早々に終わった。
露店が軒を並べる中本町、隈と続く町並みを歩いていくと、
船着き場に出る。
今夜は幹事の手違いで、他のお客様との相乗りなのだという。
同船する家族連れの乗客4名と、
お一人様のオジサンには申し訳ない。
何てったって、こっちはお酒が入る前から大騒ぎの団体様なのだ。
船が三隅川の中ほどまで進む。
川岸にもかなりの観客が陣取っている。
バーベキューをやっている若いグループも見かけられる。
乾杯が終わると、一気に座が華やぐ。
厳しい業界の憂さ晴らしか、
本社からの担当役員にしきりに杯を勧めて、
アーだコーだと理屈を並べる頃になると、
あたりはすっかりいい雰囲気。
三隅川に映る夜景が幻想的だ。
日中の暑さのせいで、川面を渡る風が心地いい。
水平線が斜め。
しかも焦点がぼやけてしまっているのは、
美味い酒が身体の芯までまわった証だ。
周りの様子が気になる。
手酌酒をやっているお一人様のオジサンが、
妙に不憫に思えたりする。
悪い癖だ。
お銚子を持って近づく。
「えっ、67歳?
意外と私とそう変らない歳なんですね…」
印象や髪形だけで推測したことを反省するのも束の間。
続けて、失礼極まる質問もまた、酒の力のなすことである。
「昔、女性と訳ありの旅行で日田に来て、
今夜はその思い出探し…とかじゃないんすっか?」
そうこうしているうちに、
会場のアナウンスが賑やかになる。
日田盆地にこだまする大きな爆発音とともに、
一気に川面が明るく華やかに光輝く。
花火の始まりだ。
向かいの連中もこちらに背を向けて、
花火に魅了されている。
ん?
さっき酒を注ぎに行ったお一人様のオジサンが、
いつのまにか後ろに座っていて、
肩を叩いて酒を勧めてくれたりする。
もうすっかり昔からの馴染みの体だ。
「アンタも、結構遊んだクチでしょ…?」
オジサンは鼻のテッペンに、花火の紅い光を照らして、
ニタリと不気味な笑顔を浮かべたりするのである。
かくして、天領日田の風物詩「川開き観光祭」が、
初夏の訪れを告げるのである。


