親から授かったもので、自慢できるもの。


それはかなりのアルコールでも分解する頼りになる肝臓と、

1本も欠けることのない自前の白い歯と、

この歳にしてはほとんど白髪のない、ふさふさの髪の毛である。


ところが、60歳が近づくにつれ、髪の毛にポツポツと白髪が混じるようになった。

特に、生え際の一箇所だけ、白髪の多い所がある。

かつて七三に分けていた分け目の所である。

(ブログのプロフィール写真でも…ほらね!)


セットしようとドライヤーの熱い風をあて過ぎたからだろうか。

4、5年前の関口宏さんのヘアスタイルのように、

白髪が帯状になって目立ちだした。


そのままの方が格好いいんじゃない…

わざとそこだけ色抜きするなんて、オシャレだね…

家内も含め、赤の他人は適当に評価してくれる。


知っているだろうか。

白髪の帯は黒髪に比べて、簡単に地肌まで電灯や太陽の明るさを届けてしまうことを。

つまり、光によっては黒髪の中のポイントとしてオシャレに見える時と、

そこだけ毛が薄く、ややもすると禿げているのではと見える時もあるのだ。

実際、指差されて、「ここらあたりが毛が薄くなったね」と指摘されたこともある。


そしてついに、染め師の門をたたいたのである。

半年ほど前だったか…


二種類のゼル状の薬を、平たい櫛の上に乗せて塗りたくる。

そして、待つこと5分間…

いとも簡単な作業のようだが、意外とコツをつかむまでが難しい。


最初の日は、下着のシャツをダメにしてしまった。

作業の翌日、爪に点々と残った黒い斑点を見て、

悪性の病では…ビックリしたこともある。


半年ほど経つと、コツをつかんで慣れてきた。

しつこく言うが、染める場所は、

かつての七三の分け目の一箇所だけなのだから…

簡単である。


とは言え、シャンプーしてリンスというほど簡単なわけではない。


シャツを汚さぬようパンツ1枚になったり、

おでこに妙な黒い斑点を残さぬために、生え際をポマードで仕切りを取ったり、

とそれなりの作業手順は煩わしい。


だけど、髪の毛の伸びとともに、

「ここ染めてる場所ですよぉ~」

とでも言わんばかりの霜柱みたいな集団が現われると、気が気でなくなる。


鏡を見て悩む。

明日は、高校時代の同級生との還暦同窓会がある。

手間だけど、染めようか…


いや、そう心配する必要はない。

ほとんどの男友達は、白髪頭であったり、薄い髪の毛であったり…

60歳ともなれば、五十歩百歩の初老の姿である。


ただ、かつての七三の分かれ目に巣くう1cmに満たない霜柱の野郎が、

「コイツは自分の老化を認めず染めてる、見栄っ張りなヤツですよぉ~」

と、暴露しているようで不愉快さが増す。


よしっ!

やっぱり染めよう!
未熟な染め師の登場である。