福岡県筑豊地方。
かつて炭鉱で栄えた地域である。
その中心的な町の飯塚や田川や直方を車で通過することはあっても、
なかなか足を踏み入れることはなかった。
もう3年も前。
ふらりと田川の旧商店街を歩く機会があった。
シャッター通りと化した旧商店街の寂しい様子は「炭鉱の町 」で書いたが、
その時、実は田川市石炭・歴史博物館にも立ち寄った。
その田川市石炭・歴史博物館は、小高い丘の上にある。
その昔、三井田川鉱業所の伊田竪坑のあった場所である。
今まで車で素通りするだけの時には気づかなかったが、
大きな丸型のレンガ造りの煙突が2本聳えている。
遠くからでもすぐ分かる。
あの「炭坑節」の中で、
♪ あんまり煙突が 高いので
さぞやお月さん 煙たかろ~
サノ、ヨイ、ヨイ…
と唄われた煙突である。
当時発掘に使用していた竪坑櫓もそのまま残され、
周囲には炭住と呼ばれる炭鉱夫達の長屋も再現されている。
立派な博物館の中に入った。
が、人の姿が見えない。
聞きなれたリズムよりずっと間延びした「炭坑節」のメロディが流れる受付で入場料を払う。
分かりやすく展示された資料と、
立派な展示施設で、
筑豊の石炭産業の歴史が良く分かった。
が、その時一番感銘を受けたのが、
実は山本作兵衛の遺品だった。
明治生まれで、大正、昭和の時代を現役炭鉱夫として過ごした彼の作品は、
どれも活き活きとしていた。
相変わらず間延びした正調炭坑節の流れる受付で、
退屈そうにしていた女性に山本作兵衛のことを聞き、
そこに並べていた山本作兵衛の特集を買った。
そして、先日山本作兵衛の作品が、
ユネスコの世界記憶遺産に登録されたことを知った。
作兵衛の実体験に基づくリアリティな画風と、
それに添えられた素朴な説明文に心打たれのだった。
さっぱり絵心などなく、
芸術的な絵画の価値など判らないが、
この画集を買った自分の目を誇りに思った。
そして先日、3年半ぶりに田川市石炭・歴史博物館を訪れた。
以前とうって変わって、多くの見学者で賑わっている。
間延びした炭坑節は流れておらず、
受付の女性もキビキビした態度で応対しているではないか。
ロビーには架設テントが張られ、
増えた見学者相手に、田川特産品販売コーナーもできていた。
炭鉱よりずっとずっと深い処で眠る山本作兵衛は、
自分の作品を見に来る人々をどう思っているのだろう。
おそるべし、世界記憶遺産登録の効用である。
やはり。
願わくば、愛する郷土、宇佐神宮・国東半島を世界遺産に登録…だな。


