蒲鉾屋の4代目さんから、前の記事にコメントをいただいた。

鋭いご指摘で恐縮している。


あれは、あくまで朝ぼらけ前にシャキッとしている時で…

つまり、前夜あんまり、お調子者になってなかったときの話である。


お調子者になりきった時、別府温泉で迎える朝は、辛い。


特に、すっかり朝日が昇ってしまった頃、

酒まじりの汗臭い部屋の空気を入れ替えようと、

カーテンを開けたとたん、朝陽が部屋にぱっと差し込んだりすると、

一気に現実に引き戻されてしまう。


朝日に続く「希望の道」なんてそんなもの、

別府湾のどこにも、もう見当たらない。

全体的にキラキラと輝く海面は、

まるで嘲り笑っているかのようだ。


「世の中はとっくの昔に、動き始めている。

 もうみんな働いているというのに、

 オマエはまだ寝ぼけ眼で、

 まだ酒池肉林の世界なのか…」


深夜に漁に出かけていたのか、

漁船が次から次へと港に戻ってきている。

慌てて、服を着るのだ。


薄くなった財布が、

ズボンのポケットから、

コトリと滑り落ちたりなんかすると、もう最悪である。


仮装大賞にでも出演しそうな厚化粧のママの顔が浮かんだりする。

初めての店に、しかももう二度と行きそうでない店に、

なぜキープしてしまったのか…

と、自己嫌悪に似た後悔まで始まるのだ。


「朝食は、もうお済ませですか…?」

好意的な仲居さんの言葉さえ、自己嫌悪に拍車をかける。

誰と誰が食事を済ませ、早めに帰った…などと聞かされると、

すっかり出遅れてしまった気になってしまうのだ。


フロントで、すっかり顔馴染みのフロントマンが、

愛想笑いをしながら尋ねる。

「昨夜の宴席に呼んだ女の子は、

 なかなか綺麗な子でしたが…

 どこから呼んだんですか?」

ホテルの宴会のコンパニオンとして、情報収集しているのだろう。

でも、こちらとしては、まるで古傷にトンガラシを塗られているような気持ちにさえなる。


そそくさと車に乗り込み、シャキッとした顔でエンジンをかける。

車をぶっ飛ばして、何もなかったかのように田舎町の一員に紛れ、仕事に就く…


まあ、こんな別府の朝も多々あり…

いや、別府で迎える朝は、ほとんどがこのパターンなのである。

ご想像通りだろうが。