先日、隣町の危険物安全協会の記念祝賀会に招かれた。


会場は、別府湾を見下ろす高台にあるホテル。

記念式典では、恒例の表彰がおこなわれる。

そして、まだ明るい午後5時に、祝賀会が華やかに始まった。


津軽三味線の演奏や、大学生による国際色豊かな民俗舞踊が披露される。

そして、コンパニオンとして呼ばれた別府からのホステスさんも加わり、賑やかな祝宴となっていた。


ところで、夜のネオン街や、お店のスポットライトに照らされて、あれだけ妖艶に見えるホステスさんの化粧も、まだ明るい光の下では、ど派手なビックリメークに見えることが多々ある。


われわれのテーブルに付いたホステスさんは、まだうら若き年頃の女性であった。

キメの細かい白い肌が、うらやましい。

若さの特権である。

しかし、目だけが浮きだっている。

ファンデーションも必要ないと思われる綺麗な顔に、濃いアイラインと、太いつけ睫毛だけが異様に目立つ。


化粧などしない方が、ずっと綺麗なのに…

などと思ったりするのは、こちらが歳をとった証拠であろうか。


乾杯から数十分も経つと、すっかり座も和んでくる。


焼酎のロックを持って来てくれた彼女に言う。

こんなに白くて綺麗な肌をしているんだから、薄化粧の方が似合うよ…

要らぬお節介であることは、百も承知のことである。


そう言いながら、あらためて色白の素肌を眩しく眺める。

大きく胸元の開いたダークグリーンのドレスが、白い肌をいっそう際立たせている。


ん?

右側の首筋に、蚊こぶの跡なのか…

紅い斑点が。

良く見ると、右の肩甲骨の横にも、薄いけど紅い蚊こぶの跡のような斑点がある。

白い肌だから、目立つ。


蚊からやられたんかな、紅くなってるぞぉ~

それとも、彼の愛の証しのアト…なのかなぁ~


からかっているのが聞こえたのか、隣の席の人も立ち上がって、確かめようとする。

別なテーブルからお酌にやって来た人も、メガネを額にずらしてジッと見つめたりしている。


どれどれ…

オジサンが、蚊こぶか、キスマークか、判断して…

おっ、キスマーク、間違いなしっ。

永年の経験上、太鼓判!


この席だけが、妙に盛り上がったりしている。

オジサンに囲まれた彼女をみて、申し訳なくなったりする。


すると、彼女は、悪びれもせずしっかりとした口調で弁明した。


選挙に負けた後でストレスが溜まっていたみたいで…

いつもは、仕事柄、胸の開いたドレスが多いから、気をつけてくれるんだけど…

そんなに目立ちますか?


あまりにあっけらかんと答えられると、こちらの方が気恥ずかしくなってしまう。


どうやら、彼女が結婚も考えながら付き合っているという男性は、先の参議院選挙で敗戦した立候補者の秘書なのだそうだ。


オジサンは、詫びるつもりでつけ加えた。


大丈夫。

オジサンの知っている若き代議士の秘書だった人は、衆議院選で負け戦を2度経験し、今では県議会議員で立派に活躍しているから…と。


でも、よく考えたら…

その県議会議員になった元秘書が、選挙での敗北の腹いせにホステスさんの首筋にキスマークをつけたかどうかという話は、まったく聞いたことがないことであった。