この度、ひょんなことから秋田に行く ことになった。
始めて秋田を訪れたのは、平成9年の秋。
もう12年も前のことになる。
法人会連合会の全国大会が、秋田で開催されそれに参加した年である。
全国大会終了後、一緒に同行した先輩が、秋田の郷土料理の専門店に連れて行ってくれた。
秋田で一番の老舗というその店は、全国からやって来た客で満杯であった。
きりたんぽと塩魚汁(しょっつる)鍋の準備は整っているが、忙しそうに走り回っている従業員はもうちょっと待ってください・・・と、繰り返すだけで鍋を作ってくれそうにもなかった。
何を一番先に入れ、どうやって調理するのか…
わからない。
迷った挙句、いい方法を思いついた。
法人会全国大会の資料と一緒にもらった、秋田ナイトマップの一覧表の写真から、何となくフィーリングが合いそうなクラブに電話する。
「やぁ~、お久しぶりです。
オーイタのQとんです。
もう2,3年前だったけど、秋田に出張して来た時だったと思うんだけど・・・
おタクのお店のナンバーワンの…
何ていう子だったかな…
ほら、気さくで明るくって、美人の…」
「あ~ぁ、○○ちゃんのことでしょ!」
「そう、だったっけ…
名前忘れてしまったんだけど。
久々に今夜もまた秋田に出張してんだけど…
前みたいに、きりたんぽと塩魚汁(しょっつる)鍋、作ってもらおうかと…」
という作り話の後、本当に明るい笑顔の、気さくな秋田美人がやって来た。
そして、4人は生まれて初めての秋田訪問であること。
出張で以前やって来たことなど、作り話だったことを謝った。
その代わり、一次会の後の二次会は彼女の店に行くと約束する。
彼女は、そんな客の嘘を責めることなく、笑いながら秋田の郷土料理を手際よく作ってくれた。
彼女の勤めるお店のママも、屈託のない笑顔の素敵な人で、われわれの秋田の女性に対する印象は、一変に高まった。
店がはねた後、着物の似合うママとその○○ちゃんと、鮨屋まで行って盛り上がった。
懐かしい、良い思い出である。
さて、久々の秋田訪問。
その店の名前だけは、まだ良く覚えている。
電話番号を調べて、電話をする。
ママを呼び出す。
「え~っ…。 ごめんなさい。
ぜんぜん覚えたいないけど、いつ頃の話でした?
10年以上前の話だったら、前のママがやってた頃だわ…」
その新しいママは、気さくに前のママが今やっているというスナックの名前を教えてくれる。
「もう、10年以上前のお話ですか…
そう言えば、そんなことあったような。
もう私も、5×歳のおばあちゃんだから、幻滅するかもしれないけど… 」
もともと彼女の美貌に、思い出がある訳ではない。
第一、どんな容姿だったかさえも、思い出せないでいる・・・
明るくお人好しの女の子と、もう何年も通ったお店のママのような気さくなそのママの人柄は、そのまま秋田の好印象に繋がってきた。
決してママの容姿に惚れて、会いたい訳ではないのだ。
ママが言う。
「私も、いいおばあちゃんになって…」
だから、気風の良いママに出会いたいだけなのだ。
月日は、百代の過客にして、行き交う客とママもまた旅人…
…なのである。