唐突であるが、「とんぷく」ってご存知だろうか?

薬のことじゃないかと思われた方。

では、一体どんな薬を、想像されたのだろうか?



この話は、もうずいぶん前のことである。

私の周りの人間は、酒のツマミとして、もう何度も聞かされたに違いない。

あえて、また…である。


平成14年の9月。

この頃も、連夜の飲み会が続いていた。

とうとう心臓も負担を感じたのか、不整脈を生じてしまった。


あわてて、入院することになった。

が、大したこともなく、2日後に退院。

血液をサラサラにするワーファリンと、心臓の鼓動を保つサンリズムを服用しながら、定期的に心電図を取って様子を見ることになった。

2007年10月10日「定期健診」参照


ワーファリンは、1年ほどして止めた。

その後、3年半ほど心電図に異常が表れなかった。

もうその頃になると、通院していた病院の先生とは、すっかり親しくなっていた。

自分から提案してみた。


「もう、ここら辺りでサンリズムを止めたら、マズイですかぁ~?

 診察料の売上が少しばかり減って、申し訳ないですけれど…」


先生も、ボツボツ投薬の必要はないだろうと思っていたのかもしれない。

売上減少の冗談を無視するように…


「そうやなぁ~

 じゃ、サンリズムをトンプクにしようか…」


「トンプク?

 漢方薬…?

 いくら何でも…

 トンプクが、解熱剤が、不整脈にも効くんですか?」


私の脳裏には、富山の置き薬の赤い箱を思い出していた。

子どもの頃、熱が出たとか、腹痛だとか大騒ぎするたびに、母がトンプクを取り出していたあの箱である。


「ちょっと…、Qとんさん…」

と、先生は呆れ顔で…

「トンプク」は、「頓服」と書くこと。

「頓」は、「頓死」の「トン」で、突然とか、急の意味。

「服」は、「服用」の「フク」。

つまり、急に服用する薬のことであることを、紙に書きながら説明してくれたのであった。

サンリズムを今までの常用薬から、不整脈が起きた時だけ飲む頓服とするというのであった。


ショックだった。

病院で、「頓死」を引き合いに出されたからではない。

その時まで、トンプクは薬の名前だろうと思っていた。

まさか、服用の方法だとは、知らなかったからである。



その後、トンプクが酒の話のネタになったことは言うまでもない。


そして、周りの飲み友達の多くが、同じような勘違いをしていたことを知って、ホッとしたものだった。

ただ、友人の医者や薬剤師たちは、一般人がカン違いしていることに驚いていた。


その話もすっかり忘れていた昨日のことである。

ご主人を医者にもつご夫人に、ひょんなことからトンプクのことを聞いてみた。


「え~? トンプクって、解熱剤のことじゃなかったんですか?」


まだまだ、この話は酒の話のネタにたびたび登場させて、広く一般人の誤解をなくす必要がある…

と、あらためて使命の大きさを認識した次第なのである。