唐突であるが、「とんぷく」ってご存知だろうか?
薬のことじゃないかと思われた方。
では、一体どんな薬を、想像されたのだろうか?
この話は、もうずいぶん前のことである。
私の周りの人間は、酒のツマミとして、もう何度も聞かされたに違いない。
あえて、また…である。
平成14年の9月。
この頃も、連夜の飲み会が続いていた。
とうとう心臓も負担を感じたのか、不整脈を生じてしまった。
あわてて、入院することになった。
が、大したこともなく、2日後に退院。
血液をサラサラにするワーファリンと、心臓の鼓動を保つサンリズムを服用しながら、定期的に心電図を取って様子を見ることになった。
ワーファリンは、1年ほどして止めた。
その後、3年半ほど心電図に異常が表れなかった。
もうその頃になると、通院していた病院の先生とは、すっかり親しくなっていた。
自分から提案してみた。
「もう、ここら辺りでサンリズムを止めたら、マズイですかぁ~?
診察料の売上が少しばかり減って、申し訳ないですけれど…」
先生も、ボツボツ投薬の必要はないだろうと思っていたのかもしれない。
売上減少の冗談を無視するように…
「そうやなぁ~
じゃ、サンリズムをトンプクにしようか…」
「トンプク?
漢方薬…?
いくら何でも…
トンプクが、解熱剤が、不整脈にも効くんですか?」
私の脳裏には、富山の置き薬の赤い箱を思い出していた。
子どもの頃、熱が出たとか、腹痛だとか大騒ぎするたびに、母がトンプクを取り出していたあの箱である。
「ちょっと…、Qとんさん…」
と、先生は呆れ顔で…
「トンプク」は、「頓服」と書くこと。
「頓」は、「頓死」の「トン」で、突然とか、急の意味。
「服」は、「服用」の「フク」。
つまり、急に服用する薬のことであることを、紙に書きながら説明してくれたのであった。
サンリズムを今までの常用薬から、不整脈が起きた時だけ飲む頓服とするというのであった。
ショックだった。
病院で、「頓死」を引き合いに出されたからではない。
その時まで、トンプクは薬の名前だろうと思っていた。
まさか、服用の方法だとは、知らなかったからである。
その後、トンプクが酒の話のネタになったことは言うまでもない。
そして、周りの飲み友達の多くが、同じような勘違いをしていたことを知って、ホッとしたものだった。
ただ、友人の医者や薬剤師たちは、一般人がカン違いしていることに驚いていた。
その話もすっかり忘れていた昨日のことである。
ご主人を医者にもつご夫人に、ひょんなことからトンプクのことを聞いてみた。
「え~? トンプクって、解熱剤のことじゃなかったんですか?」
まだまだ、この話は酒の話のネタにたびたび登場させて、広く一般人の誤解をなくす必要がある…
と、あらためて使命の大きさを認識した次第なのである。