朝8時から、書初め大会の世話の真似事をしてきた。


開会行事の後、参加者の小中学生は自分で準備をして、練習を始める。

そして、1時間の持ち時間の中、主催者側が準備した5枚の用紙に清書をするのである。

できあがった5枚の作品から、1枚を作品として提出する。

付添者も含め、誰の力も借りることができない。


持ち時間が終わる頃に、5枚の作品を並べて、腕組をして悩んでいる少年を発見した。

どうやら、小学校3年生のようだ。

首を傾げながら、自分の作品を見比べている。


そして、1枚を惜しそうに引きぬいて畳んだ。

残った4枚をまた見比べている。


かわいい。

甲乙つけがたいのだろう。

自分が一生懸命描いた作品なら、なおさらのことである。


小さい少年の苦悩している後姿があまりにかわいい。

隣にいた同じくボランティアをやっている味噌屋の四代目に、その様子を告げた。


彼は、その少年の背後まで歩いていって、その作品を見に行った。

悩みに悩んでいる作品の出来栄えが気になったのだろう。

そして、ニヤニヤしながら戻ってきて言った。


「自分の眼だけでは、決まらんのやろう~

 こうやって、決めよん…」


彼は、その少年のやっていた仕草…

「ど れ に し よ う か な、 天の神様の言うとおり…」

と呪文を言いながら、指先で決定する、あの方法をやって見せた。


興味がわく。

私も近づいて、彼の作品と、彼の選考方法を盗み見た。


3枚の候補作品から、天の神様に言われた作品を引き抜いていた。

そして、残った2枚のどちらにするか、天の神様にお伺いを立てている最中であった。


シーンと静まる神聖な会場で、その仕草はひと際、人間臭かった。


彼は、書道家にはなれないかもしれない。

でも、飄々と「天の神様の言うとおり…」をやっている仕草を見ると、きっと人間らしい魅力あふれる人になるだろうと思った。


頑張れよ、Fくん。

キミなら、皆から愛される人になるに違いない。