だいたい1カ月に1回のペースで、散髪に行く。
行きつけの散髪屋は、車で1時間の別府の市街地にある。
そこのマスターが、かつて理容コンテストの全国大会で優勝したらしい。
でも、それがそこの常連になった理由ではない。
宴会の前の時間や、二日酔いの翌朝の時間を利用しているうちに、そこが行きつけとなってしまった。
ヘアスタイルは、ほとんど変えたことがない。
幼少の頃は、育ちを表わすお坊ちゃま刈り。
中学生の頃は、少年剣士らしく丸坊主。
高校時代から社会人、そして結婚して父となるまでは、一貫して七三の真面目な髪型。
結婚して5、6年たった頃、イメチェンのつもりでパーマをかけた。
1回だけ…
でも、とても不評で、それ以来ずっとオールバックの今の髪型である。
先日、行きつけの散髪屋に行った。
いつも、ヘアスタイルのリクエストなどはしない。
一言、「いつものように」と言うだけである。
なのに…
カットを始めたときに、久々に注文をつけた。
「最近、カットの腕前落ちたんじゃない…(笑)
だんだん伸びてくると、セットし難くなってくるんやけど…
上に比べて、横の毛の剥き具合が少ないんじゃないかなあ…
横の髪も、上の髪みたいにバサッと剥いておくれ」
結構、あー言えば、こー言うタイプのマスターである。
特に、技術的なことは決して譲らないところがある。
決して、理容コンテストのチャンピオンだからという程度のプライドでなく…
なのに…
珍しく、「はい」、と短く返事したまま、世間話に変わった。
昨日の日曜日。
仕事もなく、人と会う予定もない。
髪に休息を与えてやろうと、整髪剤は一切つけなかった。
夕方、何気なく洗面台の鏡を覗き込んだ。
洗面台に組み込まれたライトに照らされた、見慣れたいつもの顔がそこにはあった。
一昨日散髪したばかりの髪の毛は、整髪剤で強制的に形づけられることもなく、伸び伸びとしていた。
そして…
ライトの明かりは、髪の地肌まで明るく照らし出していたのである。
髪の毛には、ずっと自信があった。
でも、髪の毛に遮られることなく、地肌が見える。
上の髪の毛は細くなったのか、もしくは数が減ってきたのだろうか。
横の髪と上の髪の剥き具合のマズサと思っていたのは…、
散髪屋の「手抜き」じゃなく、どうやら私の老化による「毛抜き」が原因だったようである。