ゴルフコンペの後、飲むことが多い。
昨日もそうだった。
最高の天気に恵まれたにもかかわらず、ゴルフの戦績はいつも通り。
表彰式では、同伴者の入賞を横目で見ながら、もっぱら拍手をするだけであった。
そして、入浴。
木立の間を吹きぬける秋風が爽やかだったとはいえ、知らぬ間に滲んだ汗を流すと気持ちいい。
風呂上りに身体を扇風機で冷まし、夜の部に備え、洒落た服装に着替える。
ん?
いか~ん!
洒落た服装用のベルトを、自宅に置いたままにしてきた。
ゴルフズボンのベルトは、あまりに太すぎる。
せっかくの洒落た服装が、台無しになってしまう…
ま、いいか。
今夜の宿の近くには、幸いに老舗の大きなデパートがある。
宿に行く前に、ちょっと寄ってベルトを買えばすむことである。
それまで、ベルトがなくたって、運転には何ら支障はないし…
第一、メタボのふくよかなわき腹に支えられて、ズボンがずり下がることもない。
そして、その老舗デパートに近づくと…
あいたぁ~、シャッターが閉まっている。
確かここ数年、定休日とかなんかなかったのに、よりによって休み。
仕方がないので、その老舗デパートの近くにあるパル○に行く。
ここには、とんと行ったことがない。
売り場案内板で確認して、紳士もののありそうな5階売り場に上がる。
エレベーターの扉の前にある店に立っていた、イケメンのお兄さんに尋ねた。
「すいません。紳士用のベルトは、どこで売っていますか?」
「え、ウチでもベルトならあります…」
と、彼が連れて行ってくれたところには、チクワの形を繋いだようなベルトが吊るしていた。
「いや、中年用というか、私の年代が… つまり、このズボンにするような…」
わざわざジャケットをめくり挙げて、ズボンを見せる。
そこには、主をなくして拍子抜け顔した、ベルト通しだけがある。
「あ~あ、スーツ用のベルトですね。」
イケメンの店員は、丁寧に隣のお店に連れて行ってくれる。
そこでも、髪が総立ちになったような今風の店員がいた。
イケメン店員が、こちらの必要なものを簡単に伝えた。
黙っていられなくて、何か喋りたくなる。
習性である。
「あの、かなり成長したウェストなんで、一番長いヤツがいいんですけど…」
店内の展示用の商品を見て、痩せぎすの男たちの店だろうと容易に推測された。
今風店員も、こちらの意図を察したらしい。
「ああ、お客さんにお似合いのベルトでしたら、向こう、突き当たりの赤い壁の…」
と説明しながら歩き始め、またもやそこまで同行してくれる。
今度もまた、今風店員が説明してくれた後、一番長いヤツを…と、付け足すところまで、さっきの繰り返しである。
今度は、少しばかり落ち着いたアラサー店員が、黒い皮製のベルトを差し出した。
直視して、サイズが合わないことがわかったが、一応腰に回してみせる。
バックルとベルトの先を、へその辺りにもってくる。
5cmほど、間があいている。
「ね、コレじゃ、とても…」
アラサー店員は、悪びれた表情もせず、驚いてみせる。
「えっ? 後ろに、携帯用ポシェットかなんかが…」
と、腰に別の物があるんじゃないかと、後ろにまわって確認する。
だから、ポシェットを通そうにも、そのベルトを家に忘れてきたって言っているじゃないか。
「いや、お客さま見かけはスリムなのに、意外とウエスト、あるんですねぇ…」
どこが、スリム…?
彼が気を回していることが分かって、反って傷つく。
「いやぁ~
こりゃ、わざわざ皆さんに、メタボの恥をさらしに来たようなもんだな…」
と、今風店員とアラサー店員に照れ臭そうに言うと、目いっぱいの笑顔で立ち去ろうとする。
すると、彼らは、老舗デパートと、このパル○の間に、紳士服専門店があることを教えてくれる。
いや、最後まで親切である。
若いのに、彼らの接客態度は、優れていると思う。
なんと言っても、悪いのは私のメタボ腹なのだ。
そして、エレベータを待っていると、最初のイケメン店員が声をかけてきた。
「お気に入りのベルト、見つかりました?」
彼らの誠心誠意の気遣いに、また照れ隠しで言う。
「こんなメタボの腹に合う品は、こんな若者向きの所には、ある訳ないなぁ~
本当に、恥だけさらしに来たようなもんで… 笑わんでおいてな。 」
すると、彼もまた親切に教えてくれた。
この上の階に行けば、無印○品のお店があるというのだ。
デザインとか気にしなければ、そこにはあるかもしれないと…
その後、一度外に出て、紳士服専門店に行ったが、ここも定休日。
結局、無印○品で、やっとめざすメタボ用ベルトを購入することができた。
その夜、酒の話になったのは、言うまでもない。
そして、その苦労して手に入れたベルトを見ると、
「いやぁ、Qとんさんがすると、どんなベルトも品よく見えるねぇ…」
と言うお世辞も、酒の場の盛り上げには、大いに役立ったのであった。