膵臓癌かもしれない。

膵臓癌ならば、ステージⅠの早期の今の内に切除した方がいい。

いや切らずに、会社のことや家の細々したことを、元気なうちに引き継ごう…

と、大騒ぎをしてから、半年の月日が流れた。(膵臓癌騒動=最終章


最終的に、良性の腫瘍と診断してくれた癌研有明病院の先生から、半年後の検診を勧められていた。


今日、膵臓に腫瘍の影を発見してくれた病院に行った。

造影剤を注入したCTによる検診だった。


半年前はあれだけ深刻そうだった主治医の先生。

今回は、饒舌である。

前回の影と大きさが変わっていないことを告げてくれた。

そして、癌マーカーの数値には異常がないけど、γ-GTPが高すぎる…

と、しっかり苦言を呈してくれた。


こっちとしては、北海道旅行で、毎日朝から晩まで、大酒を浴びるように飲んだのだから、今更ビックリすることではない。


先生が続けた。

「じゃあね、また半年後の検診の日、今日決めておきましょうか?」


「ええ、来年のことですが…

 先生のおっしゃる日で、いつでも結構です。」


半年後は、平成22年3月。

来年の暦の載った、愛用の手帳を広げていると、先生も覗きこむ。

そして、手帳全体を指差すようにして、先生が言った。


「3月15日。

 この日にしましょう。

 私の外来当番の月曜日だし…

 第一、この日は覚えやすい日だから、忘れんでしょう。」


ん?

3月15日って、何の日だったか?

桃の節句は、3月3日。

春分の日でもないし…


私の怪訝な顔に気づいたのか、先生が笑顔で教えてくれた。


「3月15日は、私の誕生日ですから、忘れようがない…」


「そりゃ、先生にとって覚えやすくても、覚えておかんといけんのは、私の方ですから…

 ま、じゃあ次の検診は、誕生プレゼント持参ですね…」


主治医の後ろに控えていた看護師には、大ウケである。


決めた。

もし、どんな癌になっても、はたまたγ-GTPの異常な数値が下がらず、大酒が原因で肝臓を壊すことになろうとも、最期は人間味あふれるこの先生にすべてを託せよう。


今回も、またそう思った。