先日、博多の中洲で飲む機会があった。
福岡に行ったのには、ちゃんとした理由があった。
この秋、観光協会が福岡で物産展をする。
その場所を視察をするのが、今回の目的だった。
でも、物産展に並べる商品などない私とって、もっぱら中洲の夜を楽しむために企てた視察であった。
その候補地を慌ただしく視察した後、行きつけの小料理店に行く。
ここは、もう20年来の行きつけの店である。
気風のいい名物女将が迎えてくれる。
玄界灘で採れた、生きのいいイカやサザエそれに佐賀牛のサイコロステーキを肴に酒を酌む。
同行したのは、4人。
みんな、楽しいヤツばかりである。
美味い料理がわかるヤツばかりなのである。
美味い酒と料理を堪能した後、行きつけのスナックへ二次会。
われわれ4人の他には誰一人いないことをいいことに、カラオケショーが続く。
マスターも興に乗って、ライブショーを演じてくれた。
怪しげなちょんまげのベースギターの演奏者と、マスターのリードギターと甘い声で、すっかり盛り上がってしまう。
そして、三軒目は、閑かなショットバー。
那珂川沿いの暗い店。
那珂川の川面にネオンが煌めき、幻想的な雰囲気である。
お気に入りの、隠れ家的な場所である。
二次会ですっかり盛り上がった一行には、不向きだったかなぁ…
金曜日の夜。
お似合いのカップルたちに、きっと迷惑をかけたに違いないと思う。
そして…
博多の夜は、屋台で締めなくっちゃあ様にならない。
明日まだ天神で仕事があるという、同行の女性をタクシーに乗せて帰らせると、那珂川沿いの屋台に向かう。
ここでも、不況の影が忍び寄っているのか。
並ぶことなく、すぐに適当な屋台を探して陣取ることができた。
牛タン、ホルモン…を、注文する。
飲み物は、ビールを3本と焼酎のお湯割り。
名物の博多ラーメンは、最後に頼むつもりだ。
簡単な板きれでできたテーブルの差し向かいには、スーツ姿の男性が3人。
やはり、ツマミ風の料理を頼んで、飲んでいた。
酒を飲んだ時の悪い癖である。
見も知らぬ人に、気さくに声をかけてしまう。
「あなた達は、博多の人?
どう、良かったら、一杯いきませんか?」
と、手持ちのビールを注いで、また話しかける。
「ありゃ…
襟には、立派な社章を付けてらっしゃいますね…
オタクの会社当ててみましょうか?
うーっと、ブイゾーン株式会社でしょ…?
ご婦人のブイゾーンにフィットする。
パンストでしたっけ、作っててんですよね…確か?」
もちろん、適当なことを喋っているだけである。
襟には、丸い社章のバッジがあった。
中には、アルファベットのVの文字がデザインされている。
同行の友だちが、その襟章に目を近づけて尋ねている。
「『V』かと思ったら、ペンの形なんですか?
何か、ペンに関係ある会社なんですか?」
その後、隣に来た30代の若者たちにもビールを分けたりして、我々のテーブルは見知らぬ3グループがたわいもない話で盛り上がっていた。
そして、どれくらいの時間がたったのだろう…
屋台のオヤジから看板を告げられて、計算をする頃になって、前のV文字の襟章をつけた男性が名刺を出しながら説明してくれた。
「これ、国会に入る時にいるバッジなんです。
われわれ、記者クラブに所属してまして…」
彼の名刺には、○○新聞の文字が大きく書かれ、連絡先には会社とは別に野党クラブもあった。
野党専属の政治記者。
新聞記者の中でも花形と言われる、いわゆる番記者だったのだ。
衆議院解散総選挙間近と言われている。
他の二人は別の新聞社だから、民主党の大物政治家を追って福岡に来ていたのかもしれない。
物産展出店場所を視察する口実で、中洲の夜を楽しみすぎて、最後の締めだと屋台にラーメンをすすりに来ている酔っぱらいとは、そもそもが違っていたのだ。
失礼しました、○○新聞と※※新聞の番記者さま。
ブイゾーン株式会社だなんて…。
でも…
だったらだったで、早く教えてくれれば、政治の裏話を聞かせてもらったのにぃ~~~