還暦間近の小粋なオジサンが、橋の上でサックスを演奏するのは、「路上ライブ」と呼んでいいのだろうか?
「大道芸」に近い、いやその場の雰囲気作りのプロの演出家といった味わいもある…


博多の歓楽街、中洲。
那珂川に架かる橋の一つに、「福博であい橋」がある。


6月上旬の土曜日。
約束まで時間があったので、人形通りにある行きつけの小料理屋のカウンターに座り、小一時間。
玄海灘の魚をつまみに、冷酒を味わう。
ほろ酔いの熱い体を冷まそうと、であい橋の欄干に佇んでいた。

川面に映るネオンや、その橋を行き交う人の表情を眺めていると、結構それだけで時間が経つ。


いつの間に来たのか、橋の上のスペースに大きなカバンを持った小粋なオジサンが現れた。
手品のようにそのカバンから次から次へと小道具を出すと、手馴れた様子で並べる。

そして、リズムリーダーのテンポを早くしたり、遅くしたりした後、ふいに演奏を始めた。

♪ムーン・リバー~~~♪


おお~
那珂川のネオンに煌めく小波に、オードリーの愛くるしい瞳を思い出させるような情緒が漂う。


何曲か演奏を続けるうちに、彼を遠巻きにして何人かが立ち止まる。

そのうち、宴会から二次会に移動中のなのか…
賑やかなグループがであい橋を渡ってきた。
60をちょっと超えたような男女のグループ。
みんな年齢よりもずっと派手な格好をしている。

同級生たちで久々に顔を会わせたんだろうか?

1組のカップルが、そのサックスを演奏する前の橋の真ん中でダンスを踊り始める。
ブルースをかなりのテクニックで華麗にリードする男性。

別なカップルが、ジルバで加わる。
スロージルバだが、上品である。
同じグループの数人は、マンボのステップで踊り始めた…

2曲ほど踊って、そのサックスの演奏者の前にあった透明のポリ容器の箱に、そのうちの一人が千円札を何枚か入れて立ち去った。


う~ん、やる!
こういう連中は、カッコイイと思う。


梅雨入り前の暑い日の夜だったけど、川面に走る風は気持ち良く、その橋の上がロマンチックな雰囲気につつまれた。

そのサックス演奏者に、拍手喝さい。

待ち合せの時間が近づいていた私は、小銭入れから金200円也を件のポリ容器に投げ入れて、待ち合わせ場所に急いだのでありました…


まだ、まだ、カッコイイ人間には、ほど遠いぞ…