最初に献血したのは、確か高校時代だったと思う。
それから「趣味は年に2回の献血」だと公言し始めて久しい。
連休の谷間。
大型文房具店に専門的な用紙を買いに行った。
道すがら、連休の道路渋滞情報とともに血液献血の呼びかけがラジオから流れてきた。
連休で会社での献血が少なく、血液が不足していると言うものだった。
・・・という訳である。
買い物の後、とあるビルの3階にある献血ルームに、迷わず向かったのは。
実は、年2回の献血が趣味と言いながら、平成14年からずっと遠ざかっていた。
平成14年の秋、心房細動いわゆる不整脈が生じて以来、サンリズムを服用し始めた。
それと共に、献血は遠慮していたのである。
そのサンリズムの服用も、昨年4月を最後に止めた。
「○○さんですね? 平成14年から… 久々の献血になりますね? 」
別にうろたえる必要などなかった。
でも、受付のオヤジの事務的な口調に、不整脈であったことを知っているんだぞ、というような落ち着きを感じた。
ここは、1年以上サンリズムの服用を止めていることを、ちゃんと説明しておかねばならないと思った。
妙に追い込まれたような気持ちになっていた。
「ええ。
え~っと、14年の9月だったか、10月だったか…
不整脈が判明いたしまして・・
いえ、今はもう大丈夫なんですけど…」
「今も、お薬とか飲んでいるのですか?」
ほら、来た。
服用を止めた薬の名を言おうとして、
「バイアグラ…」
いや、違う。
すぐ違うと気づいて、その言葉をひん呑み込んだ。
よりによって、何でこんな時に、バイアグラなんていう言葉が思い浮かぶのか。
…リズム、何とかリズムだった。
思いつかない。
最近、こんな時が良くある。
早く、と思えば思うほど、記憶の中のガスは濃くなっていく。
きっと、でもそれは、ほんの数秒のことだったと思う。
で、
「ええ、バイオリズムを3年ほど。
でも、それも止めて、もう1年半になりますが…」
「え? バイオリズム?」
受付の同年代のオヤジは、バーコードのような頭を急に起こして、私のうろたえた目を覗き込んだ。
そんな彼の指摘の言葉を待つまでもなく、こっちとしてもすでに間違いには気づいておったのであるが。
彼の言葉に重なるように、でも、ちょっと小さめの声で…
「バイオリズムじゃなく、サンリズムです」
バイアグラを最初に思い浮かべた脳みそは、単純に
「バイアグラ」+「サンリズム」=「バイオリズム」
なる公式を導いていたのであった。
かくして、5年ぶりの献血は無事に終了したのである。