子どもの頃、遊び疲れて帰宅すると、プーンと漂ってきたあのカレーの香り。
家庭の温かみの象徴のような香りだった気がする。
そのカレーの香りではなく、歳を重ねるとともに漂うらしい、あの加齢臭の話題。
歳をとったら、わざわざ嫌われるために、イヤな香りを発散するようになるのだろうか?
若い頃、異性を引きつけるために発散するフェロモンじゃあるまいし。
地方選挙の後半戦が昨日終わった。
財政破綻の夕張市。
映画の世界のような候補者射殺の後、投票日寸前立候補の長崎市…
話題は豊富だった。
深夜近くになって、お決まりの万歳三唱と、通夜みたいな席上で深々と頭を下げる落選候補のシーンが繰り返されていた。
ある参議院補選で落選したある候補の仕草に目がいった。
整髪料でテカテカになった御髪(おみぐし)下の額にハンカチをやる。
両手で、こするように額を拭くのである。
そして、そのハンカチのふき取った箇所を確かめるように見つめている。
彼にとって、落選はよほど予期しかねる出来事だったのか…
額だけでなく、あご先や、頬にも、何度も何度も同じような仕草が繰り返された。
甲子園のマウンドで青春の汗を「華麗に」ふき取る「ハンカチ王子」とは、まるで違ったその姿。
かつて流れ出た汗を拭いたハンカチは、ほどなく乾いた。
もちろんいつまでも使っていると、すえた香りがしてきたが。
歳を重ねた今。
脂肪分を含んでにじみ出る汗を拭いたハンカチは、拭いた箇所にシミが残る。
脂だからか、なかなか乾かない。
嗅ぐと、古い酸化した食用油みたいな臭い。
タマネギのような、トン足のような、ニンニクのような臭いも混じる。
加齢臭は、この脂肪たっぷりの汗を、額や、あご先や、耳の後ろに残し、それが変化して異臭になるからではなかろうか?
而して、私も暇さえあれば、ハンカチでこの加齢臭のモトを拭き取るのだ。
目で、鼻で、確認しながら…
あ~、愛すべき団塊の世代。
落選したその候補者は、にじみ出る脂肪のような冷や汗を、「加齢に」ふき取っていたのであった。