4年前、高校時代の友達が亡くなった。
癌で、8ヶ月間の闘病生活だった。


医者の不養生と、いう訳ではないが…

彼は関東のとある病院に勤めていた。
緑内障の手術では、国内に知れ渡った名医だったようだ。
老いた彼の両親の希望に従い、故郷大分に開業した。
開業まもない彼を訪ねて、全国から多くの患者がやって来ていた。
彼と飲む約束をした夜も、たいてい遅刻してやって来た。
診察に追われていたのだ。


開業して3年目の秋、入院した。


晩秋のある日、そんな悪い病気にかかっているとは思えぬほど元気の良かった彼を見舞った。
ベッドに腰かけた彼は、遠くに見える由布岳や九重連山を遠望しながら言った。

大分と、前橋の景色は、本当に良く似ているんだよな…


医者として、自分の死期が近づいていることを誰よりも良く知っている彼は、生まれ故郷の景色に、長い間医者として活躍した前橋市にある病院からの景色を重ねていたのだろうか。


昨日、縁あって、前橋まで足をのばした。
初めて訪れる地である。


午後4時半。
ホテルにチェックインをする。

利根川を隔てて、赤城山がよく見える部屋。
西日に映えて、美しい。
平野からなだらかに山頂まで延びる稜線がやさしい曲線を描く。


亡くなった友が言っていたように、由布岳や鶴見岳の景色や、九重連山に連なる山並みの稜線とは異なっていたが、彼の気持ちは容易に推察できた。

きっと、この夕日に焼ける赤城山をもう一度見たい、と思っていたのだろう。


赤城山は、穏やかで、優しかった。


友の冥福をあらためて祈った。