国東スーパー林道。


もちろん
インターネットで検索しても…
そんな道、見つからない。



地元の物知りに聞いても、
誰も知らないだろう。



でも…

あえて…

そう呼びたくなる道が、大分県国東半島にある。


国東半島は、中心の山々から伸びる、
28の谷から成り立っている。
それぞれの谷は、
山越えの峠かトンネルを通る道で結ばれている。

国東半島に残る神仏混交の仏教文化を訪ねて、
毎年多くの観光客が国東にやって来る。

よそからやって来た人にとって、
複雑に入り組んだ道は、
まるで巨大迷路と化す。
迷ってしまって国東の道はわかりにくい…
という声を聞く。


そんな訳で、
よそから来られた人のために
優しい国東でありたい…
と、迷いそうな場所に道案内の看板を、
増やすことにした。

観光客に分かりやすい看板を…、と
昨年、黒川温泉 、由布院温泉それに湯坪温泉を、小雪の舞う中 走り回ったのも、このためだったのだ。


朝の8時半から、午後5時半まで、丸1日かけた。

国東半島の東側半分の谷を、上ったり下ったり…
初めて訪れた観光客の気持ちになって、
設置場所を決めていった。



そして、山間部の、とあるところにその道はあった。
地図にも載っていない道を発見したのだった…

まるで、ノーベル物理学者が
新種の素粒子を発見したような書き方だが、
実はこの道は、保安林にいたる林道。


その入り口には…

   一般車両は立ち入りを遠慮すること
   立ち入っても一切責任をもたない
   …

等々、注意書きした看板が、立っている。


入るな、見るな、めくるな…

という禁止用語は、かえって好奇心を
かきたてるのだ。


ましてや、その林道のガードレールは、
杉の丸太である。
直径20cmくらいの丸太が2本
そのまま使って、
繋ぎ目には銅版が惜しくもなく巻かれて、
ずっと山の上に向かって続いている。


この素晴らしい道の先には、
見たこともない桃源卿が…
と、思わせるに充分である。



朝早くから、丸1日。

盆前の忙しい時期に、自分の仕事もなげうって、
よそからの観光客のために看板を設置しよう…
と奇特な行動をする輩は、
往々にして好奇心旺盛である。


ワゴン車に同乗していた6人の意思決定は、
早かった。

この道は、どこに続いているんやろ…?


確かに、管理不十分な道ゆえ、
あちこちに落石がゴロゴロ転がっていた。

しかし、丸太を使った贅沢なガードレールは、
ずっと続いていた。
しかも、山肌からの落石を保護するために、
段々にしたネットは、まるで道に沿った
花壇のように整然に続いている。


峠近くになると、ぱっと視界が広がった。

青い海が、眩しい。
瀬戸内海が一望できる。
すぐ下には、姫島が見下ろせた。

門司港か、はたまた神戸港に向かっているのか…
はるか洋上を、大型タンカーが行き交っている。


異国情緒を感じる。
自分がどこにいるのか…
まるで、エーゲ海に浮かぶ小島の
山の斜面に立っているかのよう…


誰ともなく、口にした。


「ここは、彼女と二人っきりで来るとこやな…」




もちろん、こんな良い所は、
簡単には他人に教えられない。

ましてや、よそからの観光客には…


而して、「国東スーパー林道」は、
地図に載っていないだけでなく
今度設置する看板にも表示しないことにした。