一家の大黒柱の父ちゃんが、テーブルを叩いて言った。
「アナログ放送もいよいよあと2年。
不況で、父ちゃんの給料も
下がりっぱなしや…
今までどおり、
みんなの部屋に1台ずつ
テレビを置く時代は終わったんや。
そん代わり、
地デジのテレビは大きいぞぉ~
画面がキレイになるし…
そこでじゃ、みんながお互いに譲り合って、
テレビをどこの部屋にに置くか決めて欲しいんや。。」
父ちゃんは、ひそかに思っていた。
希望はいろいろ出るだろう。
でも、最終的には玄関横の
自慢の応接間になるだろうと。
バアちゃんの隠居部屋からも近いし、
子ども部屋の2階から下りてきた階段の隣の部屋だ。
購入するのは、46インチの大型。
去年ローンで買ったばかりの
革張りのソファにはお似合いだ。
第一、子ども達が主張する茶の間に置いたって、
邪魔になるだけじゃないか…と。
母ちゃんは、父ちゃんの肩をもつ。
「みんなの部屋から、同じくらいの距離は、
父ちゃんが言う、応接間だわねぇ~
あそこやったら広いし、みんなで一緒に見られるし…」
バアちゃんは、遠慮がちだ。
「隠居部屋にあれば一番イイんやけど…
それは叶う話じゃないし。
バアちゃんは、どこでもいいよ。
アナログ放送が終わるまでに、
地デジテレビが家にあれば、
それだけで満足、満足…」
姉ちゃんは、ヒステリックに叫ぶ。
「みんなで一緒に見るって言ったって、
そんなに揃ってテレビなんか見る?
他人に自慢するためのテレビじゃないし、
みんなが一番長い時間を過ごす、
掘りごたつのある茶の間でいいじゃない!」
無口な弟も、今日だけは真剣だ。
「ボクも、茶の間に賛成。
これからのテレビは、
見るだけのテレビじゃなくって、
ネットもできるし…
視聴者参加型のテレビ放送に対応するためにも、
くつろいでいられる茶の間がいいな…
飾り物のテレビじゃ、何のために買うんだか…」
結局、なかなか決まらなかった。
父ちゃんは、こっそり会社の上司に頼んでみた。
実は、彼の会社は液晶テレビの部品製造メーカーで、
親会社の地デジテレビ購入者には、
少しばかりの援助金が、
会社から出るのだ。
「部長、すみません。
ウチでは、まだテレビの置き場所すら決まらず…
家族の希望を聞いて、
2ケ所に地デジを設置しようかと思ってるんですが…
2台分の援助金とかは、できんのでしょうか?」
言葉を遮るようにして、部長の大きなだみ声が響いた。
「君ィ、何を寝とぼけてるんだ。
鈴木君とこも、山田君とこも、
すぐ決まってもう新しいテレビを買ったんだぞ。
家庭内がゴタゴタもめてるのは、
君んとこくらいなもんだ。
家の主の君が、だらしないからだろう…
援助金の締め切りも、間もなくなんだぞっ!!」
疲れ帰宅した父ちゃんは、開口一番叫んだ。
「もう、止めた。
オレは知らん。
オマエ達は、アナログのテレビを、ずっーと見続けろ!」
母ちゃんも、一緒になって同調した。
「あんた達、誰が稼いできたお金で買うと思っているの?
父ちゃんの言う応接間に置かんのやったら、
ウチも、もう知らん…」
という訳で、夕食後恒例の地デジテレビ購入の家族会議は、
宙に浮いてしまった。
オレは知らん…と席を立った父ちゃんと母ちゃんは、
それぞれの部屋で、アナログ放送でテレビを見ている。
しかしながら、草薙剛くんが裸になろうとなるまいと、
アナログ放送はあと2年ちょっとなのである。
【注 : これは、昨夜の夢。
決して、何かを揶揄したもんじゃございません】