初夏の大隅 | 九大昆虫班のブログ

九大昆虫班のブログ

九州大学生物研究部昆虫班です。班員が交代して更新します。

九大生研昆虫班ブログをご愛読の皆様、お久しぶりです。
そうでない方ははじめまして。
班員Bと申します。

 

最近の更新が滞ってしまって大変申し訳ない限りです。
何か何か上げようとは思っていたのですが書き始めるまでは調子が乗らないもんですね。

前置きはさておき、今回は去年の初夏に大隅に行ったときのことをブログにしようと思います。
大隅と言えば私が大好きな場所で虫がたくさんいるという九州では稀有な場所です。福岡からは遠いですが年に何回かは絶対に訪れる地になっています。

 

 

2024年6月15日 くもりのち雨

 

今日は今年初の大隅に行こうかと思う。
今回のメンバーは少し変わって後輩の二年ズ2人に私、あとは生研OBでD1のHさんの三人だ。
Hさんはハネカクシの研究をしている方で、他の雑甲虫類にも興味があるとのことで大隅にご同行して頂く運びになった。
このHさん、歩く原色みたいなお方で知識量がすごい…
ちょっと憧れの先輩だ。
このHさんとちゃんと採集に行くのも初めてだし、初夏の大隅は初めてだったのでかなり楽しみではある。

レンタカーを借り、他の三人を乗せ福岡から車を走らせ大隅に向かう。
今回最初に訪れたポイントまでは勿論高速を使う。因みに糸島から大隅間だが…

 

所要時間5時間、距離にして380km弱(googlemap)

 

といったところである。
うーん遠い…
私は関東の人間なので東京からどこまでと言った方が距離にイメージがつきやすいのでこう表現する。


東京駅から名古屋駅間が4時間半、350km弱(googlemap)


つまり、東京から名古屋へ行くよりも遠い場所となる。
九州を縦断するわけだからそりゃそのような距離になるのは当たり前なのだが、この距離を運転するのは少々骨が折れる。
なので交代で運転することが殆どである。流石にね…

最初に訪れたのは大隅半島西部の海岸部。
高速が通行止めになっていたり解除されたりして時間が余計にかかってしまったので到着したのは14時半ごろ。やはり大隅は遠い。


このポイントはある狙いの種が採れると生研OBのカミキリ屋、Nさんに教えて頂いた場所である。

階段を下り、海岸沿いに降りていく。

かなり石が大きめの礫海岸である。
ここのマルバニッケイを掬うと採れるという。

ご教示いただいたとおりに掬っていく…

カノミドリトラカミキリ

Chlorophorus kanoi Hayashi, 1963

 

おお入った。

種子島や屋久島、そして鹿児島など九州に固有のトラカミキリである。
でも生息地での個体数は少なくないようで、みんな採集出来ていた。
こういった採集は予定調和になってしまいがちだが、狙いのものがちゃんと採れるというのはそれだけで楽しみがある。

採集していると雨模様になってきた。
いそいそと車に戻って雨宿り。
今日はこのまま大隅に残ってライトトラップをやる予定なのだが雨だと少し気分が下がる。
止んでくれるといいが…

 

本土最南端のAコープで夕飯を買い、別のポイントに移動。

いい時間なのでライトを設営してライトトラップと洒落こむか?

 

だが一向に止まない雨!どうする?!

いや、強行だ。ここまで来てライトトラップをしないというのも変な話だ。雨に打たれながらライトを設営していく。

だが、なんとこのライトおびただしい量の虫が飛来することになった…

 

シロアリがね!!!!!!!

これは大変ですよ本当に。
雨に打たれ、無数に飛来するシロアリ。
どうやらそのタイミングに当たってしまったらしく、方々の朽木に目を向けると至る所からシロアリの王や女王が這い出てくるのが見える見える。
 

あまりの多さに飛来してきたノコギリクワガタくんもシロアリに溺れてしまいました~~~~~~!!!!!

 

うん、酷い。
こんな雨の中シロアリしか飛来しないライトはやめてしまえ
ということで早々に撤収。
だが撤収時はこのシロアリが無数についた幕を払わねばいけない訳で大変手間である。
ライトやらない方が良かったな…そう思ったライトトラップだった。

 

余談だがライトトラップをする前にスプレーイングをした立ち枯れからエノキミツギリゾウを採集した。欠品だがこれは嬉しかった。本州でも得られているがメインは九州のいい虫である。

Eterozemus celtis (Lewis, 1884)

 


後輩君は立ち枯れで以前から採集したいと思っていたキンヘリアトバゴミムシを採集できたようで何より。雨でもいるもんだね…
こっちは画像無し。
 

2024年6月16日 晴れ

 
今日は少し北上しムラサキアオカミキリを狙いにまたもやNさんに教えていただいたポイントへ赴いた。
朝から15時までみっちり探したがほぼ成果なしなので割愛!昨日の雨の影響かなあなんて思いつつまた大隅半島へ戻っていく…
 
今日は昨日から場所を変えてのライトトラップ&夜間徘徊。
 
ライトをつける前に少々周りを徘徊しながら気になる材を見ていく感じ。
 
すると倒木から後輩君が目の前でクロサワツツヒラタムシを採集していた。
キクイの穿孔跡のある材なので怪しいとは思っていたがまさかツツヒラタとは…
未採集のファミリーなので私も探してハイエナをさせて頂いた。
Ancistria kurosawai Sasaji, 1993
 
こちらも欠品だったが良し。
どうやら夕方から夜間にかけて倒木上に出てくるようだ。
ツツヒラタムシ科の中でもエリトラに紋があってかっこいい種類。しかも九州固有の箔がついている。
後輩君はそのあと無印のツツヒラタも採集していた。悔しい。
 
同じ材を見ていると、
オオムクゲキスイ
Biphyllus satsumanus Nakane, 1988
 
九州固有の大型ムクゲキスイで珍品。
雑甲虫においては素晴らしい成果だ。
この倒木を崇めておこう
セスジツツホソカタムシ
Carbothrus hiranoi (Aoki, 2008)
 
これも例の倒木から。採集時はヒュウガツツホソカタかと思っていたがセスジの方だった。でもどちらにせよ未採集だったのでヨシ!これ以降セスジツツを見る機会が何回かあったがライトにも飛来するほか細い新しめの材にも来ていたりとそこまで材にこだわりがある種には思えない。
 
さてライトトラップ。
残念ながらライトトラップの写真は撮ってなかった…
ムモンチャイロホソバネカミキリ
Thranius rufescens (Bates, 1884)
 
ライトを見ていると早々に飛来したルフェことムモンチャイロホソバネカミキリ。大隅ではいつも見る顔だ。
でも採れるとなんだか嬉しい。そして手が汚い。
ライトには当種くらいで他に目ぼしいものはいなかった。悲しい。
材が昨日の雨で濡れているせいか材を見回ってもカミキリなどは貧しい成果だった。
 
他に夜間徘徊の成果は、
コモンキノコゴミムシダマシ
Spiloscapha ichihashii (Nakane, 1956)
 
大大図鑑星4の美麗ゴミムシダマシで本州と九州からの記録が知られている。ここ大隅では比較的採りやすい。
ある特定のキノコに集まるようで、いる材にはいっぱいついているがその材を見つけるのが大変といった感じ。
 
明日は月曜で普通に授業があるので早めに切り上げて、夜通し運転して帰路に就く。
後輩君は疲れていそうだったので私一人で休憩を挟みつつ運転することになった。やはり遠いよ大隅…

クタクタになりながら家へ帰る。
長時間の運転と夜間の徘徊、睡眠不足でものすごい疲労感だ。
でもまた行きたいなと訪れてしまうそんな場所、大隅。
私の大好きな場所だ。
因みにこちらは帰宅した際に自分の足を確認したらついていたマダニ3exs.
大隅はマダニが多いのが玉に瑕。
 
 
とまあこんなところで今回の採集記はおしまいです。
こんな年明け一か月後くらいに半年以上前の採集記を上げるのも中々な気がしますが楽しんでいただけたら幸いです。
やはり夏は虫がいっぱい採れて楽しいですね。今から待ち遠しいです。でも夏は夏でブヨやら暑さやらでやられてしまうんですが…
 
ではまたお会いしましょう~
班員Bでした~👋