米谷です。

少し早いのですが、12/19の忘年会での講演会

のお知らせです。

私たちの現在(今)とこれからを考えるために

役に立つお話が聞けることと思います。

講師   須貝昭弘 先生 (大30期)

「一人の患者と永くかかわる歯科医療」



 私が九州歯科大学を卒業した1980年代、毎年5,000人近くの歯科医師が新たに医療の現場にでてきていた。その後歯科医師過剰問題が叫ばれだし、その甲斐あってかここ数年の国家試験合格者はその半分以下となっている。歯科医師ピラミッドは日本の人口ピラミッドよりもっとひどい壺型になっているようである。私が歯科医を引退する頃、この歯科界はどうなっているのであろうか、歯科医師の請け負う業務が多様化する中でこの減少していく歯科医師数で国民の口腔の健康を守っていくことができるのか、不安を感じずにはいられない。


 歯科医師が国民の健康を守る「医療」の一翼を担っていることは間違いないところであるがその方向性にも不安を感じてしまう。本来「医療」が対象とするものは疾病と障害である、そしてその医療が成熟した形として健康を維持するための予防が「医療」の中に含まれてきた。その医療を逸脱し医業として健康な身体にメスを入れることが許されている診療科は美容整形と歯科の分野だけである。歯科の業務の中でも医療の範疇にあるものとそれを逸脱するものとがあるが医療以外の分野がこれからの歯科医師の仕事の大半を占めるようになるのであれば美容整形の分野と同様に社会的に評価される仕事ではなくなる可能性がある。講演会や歯科雑誌の情報を見ているとここ数年の歯科界の風潮はその方向に流れているように感じてならない。

 

 歯科医療としてやらなければならない仕事は今でも山ほどあり、今後も国家試験合格者が減少し歯科医師不足となる時代が来るのであれば本当の医療行為を行う時間が無くなってしまうかもしれない。低い診療報酬に縛られた現状の医療保険制度の中で真の医療にこだわれば医院経営が成り立たない部分もある。若い歯科医師が美容室や美容整形のような感覚で医療とはいえない審美歯科に力を入れていくのも時代の流れなのかもしれない。

 

 しかし歯科医師の本分として行わなければならない歯科医療に真剣に取り組んでいかなければ社会的評価も下がり本当の医者患者関係の中から得られる感動もない仕事になってしまう。一人の患者の口腔の健康に「医療」としてかかわることが患者の強い信頼感を生み、永くかかわっていくことのできる医者患者関係を築けるものと考えている。そしてそれが歯科医師としての醍醐味ではないだろうか。未だそれを目指している段階ではあるが永くかかわる歯科医療とは何か、それによって得られるものは何なのかを今回の講演を通して考えてみたい。



プロフィール

1957年愛知県生まれ

1982年九州歯科大学卒業

1988年川崎市開業

所属学会

スタディーグループ火曜会

臨床歯科を語る会

日本小児歯科学会

日本歯周病学会