おめでとうございます
産まれましたよ!

夫婦が歓喜に包まれている時

母親の股の下では
壮絶な闘いが繰り広げられている事がある!


分娩第三期は闘いだ!
シリーズ第2弾

今回のお話は

胎盤が剥がれない!



ケースについて解説します


分娩第三期というのは

胎児が娩出してから
胎盤が娩出するまで


を指すのですが

肝心の胎盤が剥がれない事が
意外と多いのです

胎児が娩出してから
5~10分くらいで
胎盤が剥がれる事が多いですが

30分以上剥がれない事が
年に数回くらいの頻度で遭遇します

普通
子宮が強く収縮して
臍帯(臍の緒)を引っ張ると
ヌルヌルと胎盤が
剥がれてくるのですが

臍帯を引っ張っても
胎盤がびくともしないことがあって

そんな時は

ん・・・

いやだなあ
いやだなあ・・


【稲川淳二】


なんて思ったりします

何故なら
最悪の事態に

癒着胎盤

という可能性があるから

癒着胎盤は
私達産科医にとって
胎盤早期剥離と同じくらい
やっかいなものです

癒着胎盤とは
胎盤の血管や組織が
子宮の筋肉内に
入り込んでしまっている状態で

いくら子宮が収縮しても
胎盤が剥がれないし

一部癒着していて
中途半端に胎盤が剥がれてしまうと

じゃんじゃん出血してしまい
母体の命をも脅かしてしまう事があり
産科医にとっても恐怖の出来事です

このパターンは
以前産婦人科界で非常に大きな話題となった
福島県立大野病院
と同じケースであり、
産科医一人で立ち向かうのは
非常に困難です


さて、
最悪のケースは癒着胎盤ですが
そこまでいかなくても
胎盤が剥がれない場合にも
色んな処置があります

1)胎盤用手剥離

恐怖の胎盤用手剥離です


胎盤が剥がれにくい時に選択する
比較的ポピュラーな方法で

ブログ読者さんでも
体験した方はそれなりに
いらっしゃるかと思います


本当の癒着胎盤で、
これをやるのは危険なのですが
(だから福島大野事件以来
世の中は用手剥離に
慎重になっています・・)

子宮の収縮が弱かったり
癒着してないまでも
剥がれにくい時にやる手法です

【方法】

子宮に手を突っ込む

胎盤を剥がす

胎盤を引っこ抜く

と文章で書くのは
非常に簡単ですが

どこから手を入れるの?


という疑問も
なきにしもあらずかと・・

もちろん


膣から手を突っ込む


え??


と思うかもしれませんが

胎盤を剥がす時は
膣に肘くらいまで
手が入ります


まさにカオス状態


そして


本当に痛い


妊婦さんも
医者も

私もはじめて
用手剥離をした時は
全然手が入らなくて

上の先生に

「手が入らないっす!

絶対入らないっす!!」


って泣きを入れたら

「てめーの手は
赤ちゃんの頭よりもデカいのか?

いいから
イ・レ・ロ


と容赦なく言われたものです

まあ
結構コツがあるんですよね・・

ただ、
手が上手く子宮に入っても
手首がちょうど子宮の出口くらいになるので
子宮からもの凄い締め付けを受けて

悶絶する事もしばしば

手に痣が出来たりもするので
本当は出来るだけしないでおきたい手法です
(妊婦さんはもっと痛いから
お互い様ですよね・・)


ちなみに
麻酔をして行う施設が多いですが
状況や施設によっては
無麻酔でやる事もあります

2)塞栓

このシリーズの前回記事でも
少し解説しましたが

子宮動脈に詰め物をする事で
胎盤に向かう血流を減らし

自然に胎盤が剥がれるのを
待つ方法です

上述した、
剥がれかけた胎盤に対しても
出血を減らす事が出来るため
有効です

ただ
出来る施設が少ないので

塞栓が必要になった場合は
大きな施設に搬送される事になります

3)抗がん剤を使う

なんと抗がん剤を使用して
胎盤を小さくする
という方法もあります

メトトレキサート

という薬剤を使用する事が多いのですが

これは
絨毛癌といって
胎盤組織が癌になってしまう
病気に対して、非常によく使用される薬です

これを使って
徐々に胎盤が小さくなるのを待ちます

4)子宮摘出

お産のトラブルの
最終手段には

常に
子宮摘出
があります

剥がれない胎盤ごと
子宮を取ってしまう

という方法です

ほぼ
胎盤用手剥離
が大部分を占める記事になりましたが

実際そこそこ
あり得る状況ですので

一応皆さん頭に入れておいて頂ければと思います


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