小児科の偽医者 | kyupinの日記 気が向けば更新

小児科の偽医者

インターネットが普及する以前の事件は、よほどの大事件でない限り検索できないことが多い。

 

2000年前後に大きな断層があり、それ以前の事件はインターネット上にデータが残っていなかったり、Wikipediaに出て来ないこともある。

 

僕が初めて小児科の偽医者事件をメディアで知ったのは、2000年よりずっと前だったと思う。

 

偽医者をしようと思う人は、医師でないとバレにくく責任の軽い業務を選ぶことが多い。将来バレるにしても偽医者でいる期間が延びるからである。

 

小児科の偽医者事件をGoogle検索したところ検索に上がってこなかった。記憶の範囲でその事件の概略を紹介する。

 

ある日、夜間に乳児が急病にかかり、母親が救急車を呼び救急隊員が小児科に救急搬送したが、診てくれる病院やクリニックがなく、たらい回しにされていた。そして、唯一、診てくれる小児科医院に辿り着いたのである。

 

しかし、なんと、その小児科病院に偽の小児科医が当直していたのであった。

 

小児科には、乳児用のごく細い注射針の点滴セットがある。しかしその偽小児科医は、乳児の血管確保ができなかったのである。それでもなお、その偽医者は、まさに汗だくで一生懸命していたようであった。少なくとも母親にはそう見えた。

 

結局、この事件でその乳児がどのような転帰に至ったのかよく覚えていない。

 

むしろ、母親がその偽医者より、たらい回しにした病院に対し苦情を言っていたのであった。あの医師?は急患を受けれ、全力を尽くしていたと言うのである。家族が彼に恨みを抱くとかそういう記載はなかった。

 

僕が驚いたのは、医師の中でも偽医者が難しい小児科医を選択していたことである。小児科だと、おそらく速やかにバレるので、金銭目的なら最悪に近い選択だと思う。

 

正直、医師免許があっても偽小児科医として働くのは難しい。凄くストレスになる業務である。

 

2000年以降も偽医者の事件は稀に聴くことがあるが、上に挙げた偽小児科医のような難しい業務はしていない。検診や介護老人保健施設など、ボロが出にくい業務を選んでいる。

 

 

 

精神科医的視点では、もしかしたら、その偽医者はお金や名誉ではなく、単に子供に興味があって小児科を選んだ可能性があると思う。その理由は、ペドフィリアないしその近縁にある人にとって、幼稚園や小学校の教諭以上に理想的な職種だからである。(一応、言っておくが、幼稚園、小学校の教諭や小児科医に、全てそういう傾向があると言う意図はない)。

 

 

かつて、最も理想的なバレにくい偽医者は精神科医ではないかと思われていた時代があった(過去形)。これは実際、精神病院などで職員が言っていたほどである(実話)。

 

いかに精神科医が無能で誰でもできると思われていたかわかると思う。

 

 

 

過去、僕が医師になる前だが、精神科医に稀だが偽医者が存在したらしい。これは、医師の証明が医師免許証のコピーの提出で良かったためである。つまり成りすましも可能であった。

 

現在の医師の入職時は免許証の実物を提出、確認もされるため、成りすましのハードルは上がっている。それでもなお、最近、医師免許証を偽造し偽医者として働いていたと言う事件も起こっている。

 

今でも医師免許証は比較的大きいサイズの表彰状のごとき紙製で、偽造防止の「透かし」くらいしか技術がない。顔写真も入っていない。ごく最近、新しい紙幣に変わったが、偽造防止については圧倒的に劣っている。

 

 

上の都市伝説の記事は「ニセ医者に続く」で終わっている。2008年以来、16年ぶりの続きの記事が今回である。

 

医師免許証は、少なくともパスポートサイズにしてICチップくらいは入れておくべきだと思うが、理想的にはマイナンバーカードくらいの小さいサイズが理想である。

 

医師免許証の仕様は時代遅れも良いところなのである。

 

以下は、中国人の身分証の偽造犯の逮捕から足がつき、偽の医師免許証を作って貰っていた女性の偽医者のニュース記事である。

 

 

その精神科病院に勤めていた偽精神科医の話に戻るが、しばらくはバレなかったが、何のきっかけか不明だが、病院事務長が実物の免許証を持参して欲しいと伝えたところ、翌日から行方不明になったと言う。またマンションは夜逃げ状態でもぬけの殻だった。これは事件化していないので、もちろん実質無罪である。(しかも時効)

 

これはおそらく、公になると病院の評価を著しく下げる事件だったので、なかったことにしたのだと思う。

 

かつて民間単科精神科病院は、精神科医の募集は、大学医局からのアルバイト派遣など人脈経由であったため、どういう人柄なのかまでわかって雇うことが多かった。つまり偽の精神科医などまずあり得ないのである。

 

しかしそれでも急に精神科医の欠員が出た際に、医学系雑誌などで募集せざるを得ないこともなくはなかった。そういう医師に稀だが偽医者が紛れているのである。また、自ら雇ってくれと病院に依頼してくる医師も偽医者のリスクがあると言えた。

 

現在は医局の支配力が落ちているので、業者からアルバイト医師や常勤医者を募集するケースが増えている。しかし、かつての医学系雑誌に比べ、もし偽医者などを派遣したりすると業者も超絶な不名誉で評価を落とす事態なので、事故が起こらないように考えていると思う。

 

なお、個人的にここ10年くらいで最も衝撃的な偽医者事件は、ALS嘱託殺人の犯人の1人である。この事件は凄すぎて、将来映画化されてもおかしくない事件だと思う。