レボトミンとサイバー攻撃 | kyupinの日記 気が向けば更新

レボトミンとサイバー攻撃

最近、急激にレボトミンが不足しており、当院の院内薬局には50㎎錠が20錠しかない。25㎎錠は200錠以上あるが、やがて枯渇するのは時間の問題である。

 

レボトミンは古くから発売されているフェノチアジン系の定型抗精神病薬で、ヒルナミンという商品名でも併売されている。いずれも先発品。このような古い抗精神病薬は、薬価も安すぎるためかジェネリックもない。

 

製薬会社も利益がどうとかではなく社会的責任で販売しているのである。

 

ところが、レボトミンが品薄になっている原因は、サイバー攻撃だったらしいのである。サイバー攻撃を受けたのは田辺三菱製薬株式会社だと思うが、そのために出荷量が制限されている。ヒルナミンも規制されており、急にヒルナミンを購入することもできない。

 

レボトミンのような古い定型抗精神病薬はなくなったとしても、そんなに影響ないだろうと思うかもしれないが、そうでもないらしい。僕は実はあまり影響ないのでは?と思った本人である。

 

今、僕の受け持ち入院患者さんのレボトミン処方状況を調べると、25㎎錠を処方している人が1名、50㎎錠を処方している人が1名と2名だけだった。この2名は当院に転院前から既に処方されており、継続処方である。いずれも眠剤の補助として処方しており、ないならないでも極端には困らない。

 

レボトミンは抗精神病薬なので、入院患者さんはともかく、外来患者さんでは2剤制限が影響してかなり処方しにくい抗精神病薬になってしまった。外来はほとんどいないか、いても1~2名だと思う。

 

製薬会社へのサイバー攻撃と言えば、2017年のMSDがある。

 

 

精神科ではMSDという製薬会社は聴きなれないと思うが、ベルソムラを販売する製薬会社である。このサイバー攻撃の当時、パソコンが使えないので困ると言った話をMRさんから聴いた。

 

サイバー攻撃は一般の病院でも起こっており、突然、電子カルテが使えなくなるので、病歴やカルテ内容、処方状況などが閲覧できず被害を受けた病院は外来を閉鎖かそれに近い状態に至り、大変な被害になることが多い。また個人情報が流出することもありうる。

 

 

病院以外の一般企業は、これらの加害者(いわゆるハッカー)に身代金を支払ってしまうことも多いらしい。その方がかえって被害が小さくなることも多いからである。しかし完全に復旧する保証はない。

 

今回のレボトミンの不足の原因がハッカー攻撃だったことは驚きだが、現在50%ほどは生産できていると言う話である。それでも、かなり購入が制限されるのは間違いない。

 

このようなサイバー攻撃の際、レボトミンは復旧すれば、むしろ製薬会社が赤字になる極めて安価な向精神薬であることは重要だと思う。レボトミン錠はおそらく復旧の優先順位が低いであろうから。

 

ジェネリックの不正事件以降、中国での原薬の工場の事故、新型コロナパンデミックなど、薬の供給が制限される事例が増えている。