新型コロナ感染と高齢入院患者さんへの影響について | kyupinの日記 気が向けば更新

新型コロナ感染と高齢入院患者さんへの影響について

単科精神科病院で新型コロナのクラスターが起こると、必ず高齢の入院患者さんが感染する。これは、高齢者は若い人より免疫機能が低いことも関係している。今の精神科病院は高齢の入院患者さんばかりなので、自然と多くの高齢者の感染前後の様子を診ることになる。

 

まず、高齢者が新型コロナに感染し、直接死亡に至ることは意外に少ない。稀と言って良い。精神科は主病名が呼吸器疾患のため入院している人は滅多にいない。たまたま呼吸器の合併症がある人がいるだけである。直接亡くならないのは、ワクチン接種率が高いこともあると思う。

 

しかし、新型コロナに感染すると、ちょうど大腿骨頸部骨折を起こし整形外科に入院した高齢者と似た経過になる。正確に言えば、大腿骨頸部骨折とは少し異なるのだが。

 

一般に、認知症が多少はある高齢者が大腿骨頸部骨折を起こすと、入院中にせん妄が生じたり、治療終了までに大きく認知症が進行することも稀ではない。

 

新型コロナ感染症の場合、骨折後の手術や術後経過のせん妄はあまり生じないように見える。しかし、高熱が出てしばらく食思が落ち、ベッド上に横臥している時間が増えると、認知症が既にある人は更に進行しやすい。

 

高齢者の骨折&手術に比べ、新型コロナ感染症の場合、興奮性の要素が少ない。しかし時間が経つと体力低下や食欲不振による痩せなどが出現し、一見、似た状態になる。

 

僕はある病棟で新型コロナクラスターが起こった後、感染した高齢者が軒並みくたびれてしまって、認知症の人も活気がなく、顔色も悪く、発語もめっきり減っていることに驚いた。

 

これはある種のインフルエンザ後うつ状態だと思われる。このタイミングで嚥下性肺炎を起こすと、簡単に亡くなったりする。感染症後のうつの類似状態は免疫機能を低下させ、新たな感染症の抵抗力を低下させるのだと思う。これらは新型コロナの関連死と言って良い。

 

また、しばらくゾーニングのために部屋から出られないなどの環境では、軽症でも歩行数が減るし、発熱などでベッド上で横になっている状況が良くない。人との関わりも激減し認知症が進行する要因となる。

 

それまでは歩けていたのに新型コロナ後に足腰が弱り車椅子使用になる高齢者もいる。つまり介護度が悪化するのである。

 

新型コロナ感染症は、入院中の高齢者にはマイナスしかない。