死にゆく精神病院2023NEW! | kyupinの日記 気が向けば更新

死にゆく精神病院2023NEW!

 

 

上に挙げたリンクは2007年7月の記事である。ここでは、少子化や統合失調症の軽症化など入院継続するまでもない患者さんが増加し、近い将来、精神病院の入院患者数が減少していくあろうと言った見通しを紹介している。結びの言葉は、

 

このように考えていくと、精神病院は斜陽産業もいいところなのがわかる。

 

であった。その後、どうなったかと言うと、概ね記載通りだが、もう少し別な要因も加わり、斜陽さは一段と進行しているように思われる。

 

令和元年の全国の精神科病院の病床稼働率は89%くらいである。おそらく新型コロナなどの影響のため、現在は更に下がっているのではないかと思う。

 

新型コロナが流行するとなぜ稼働率が下がるかだが、もう数年寿命があったであろう高齢者が新型コロナ感染で亡くなってしまうことが1つ。感染で直接亡くならないでも、病後、体力が低下し、些細な感染症や怪我による手術後の経過が悪く亡くなるケースが以前より増えている。

 

またクラスターが起こった時期には、外来は診ていても新規入院をさせられないことが大きい。仕方なく近郊の精神科病院にお願いしたりする。このようなことから、新型コロナに関しては入院患者数は減る要素の方が多い。

 

あと2007年当時にはあまり予期していなかった要因もある。現在の単科精神科病院の入院患者は高齢化が進んでいるが、職員も同様、高齢化が進んでいるのである。なぜ高齢化するかと言うと、新規に雇える看護師さんや看護助手さんが少なくなるなど人手不足が1つ。その理由で、既に退職した看護師さんや看護助手さんに声をかけて現在働いてもらっているケースが結構ある。

 

看護助手さんは資格は必要ないので、他の業種と競合になるので、今のように働ける人が減少している時代ではかなり影響が大きい。

 

これが、都市部ではなく人口減少が激しい郡部になると一層悲惨で、看護師はいない、看護助手はいない、事務の職員さえ十分に雇えないという事態になっている。過疎化はその地域に人がいなくなることである。

 

実際、過疎化が激しい精神科病院は昔は400床くらいの規模だったのに、今はかなり減床していて、しかも空床率も高いという事態に至っていた。これはかつては精神病のスティグマから家族が都市部から連れてきて入院させる患者さんがいたのに、今はそういう時代ではないことがある。

 

上で令和元年の病床稼働率が89%くらいと記載しているが、ベッド総数も減っているため、実質的に89%よりずっと減少しているのが実態である。全国では県内の病床稼働率が70%台まで低下している県もあるほどである。

 

現在、単科精神科病院では認知症を精神科病棟で診ることもあるが、元々精神科で多くの認知症を看られるほどの診療報酬になっていない。つまり認知症を看るためには圧倒的にマンパワーが必要なので、入院させると言っても限界があるのである。

 

逆に、激しい随伴症状がある認知症患者さんは精神科病院でしか看ることは無理という人がいる。このような人を入院させると、他の認知症以外の患者さんへの影響や、看護師や看護助手さんの疲弊から、病床稼働率が上げられなくなる。

 

つまり、看護師の働き方改革的な要素も病床稼働率の限界を下げているのであった。

 

このように考えていくと、精神病院は斜陽産業を通り過ぎて、近い将来、閉院する単科精神科病院も出て来るであろう危機状態であることがわかる。