覚醒剤中毒後遺症のおっさんがあまりにも統合失調症ではなかった話 | kyupinの日記 気が向けば更新

覚醒剤中毒後遺症のおっさんがあまりにも統合失調症ではなかった話

覚醒剤使用歴の患者さんは不眠で困っていることが多く、他にイライラ感、幻聴や幻視などもあるが、そこまでの症状がない人も多い印象である。

 

稀に幻覚や幻視の体験をしゃべり始めると止まらないほど多彩な異常体験がある人がいるが、統合失調症の患者さんに比べそこまで幻覚を苦にしていないようにも見える。幻聴があっても黙っているか、苦痛な体験として語らない人もいるほどである。

 

例えば荒唐無稽な幻覚。

 

鏡を見ていると、瞳の中に人が見えた。瞳から人が出てくる。1人出てもまだ出せる(この出せるという言い方に注意)。全部で8人です。眼の中に入っている人は全知全能でした。(誇大妄想の要素が診られる)。

 

霊が見える。天国まで見渡せた。(私は)全知全能なので色々なことをした。東北の地震は自分が起こました。でも他の地震は起こしていません。(この辺りのくだりもまとまりない。)

 

恍惚感があるような幸せそうな表情だった。非定型精神病性の幻覚体験にも似ているが、ある意味、異質な少しばかり器質性色彩がある幻覚は、統合失調症の人では滅多に聴かないものである。少なくとも典型的ではない。

 

また、彼はずっとこんなことが続いていても、毎日、不眠などなくぐっすり眠れているというのである。喋りながらよく笑い、多幸的であった。

 

おそらく、幻覚や幻視の温度が低いのであろう。統合失調症の人の幻聴を100としたら、彼は15くらいしかない。

 

最も驚いたことは、彼が全く統合失調症ではなかったことである。プレコックス感などもなく、対人接触性も問題ない。全く統合失調症ではないのに、これだけの異常体験を語っているギャップに驚いた。

 

彼が覚醒剤使用歴(相当にはまっていたという。具体的な用量は聴けなかった)の話を話さなかったとしたら、統合失調症とは診断しないと思うが、診断に困っていたと思う。

 

しかし何らかの薬物系とは予想する。彼は過去にシンナーも使用歴があるが、単独のシンナー使用ではここまでの幻覚はまず診られない。やはり、日本人では最も覚醒剤が疑わしいと思う。

 

彼の治療薬として、糖尿病がないならオランザピンが良さそうである。

 

参考