現在の精神科病院入院と喫煙 | kyupinの日記 気が向けば更新

現在の精神科病院入院と喫煙

近年は、一般の身体科病院はほとんどが敷地内禁煙となり、入院したらほぼ喫煙できない。敷地内全面禁煙に移行する過渡期に敷地内喫煙スペースを設けている総合病院もあった。

 

当時、総合病院にリエゾンに行くと、喫煙スペースの狭い空間で院長がパジャマ姿の患者さんに混じり、タバコを吸っていたのには苦笑した。僕と同じ世代かそれ以上年配の医師は喫煙者が非常に多い。知り合いの僕より5歳くらい下のMRさんによると「お医者さんは喫煙するイメージですね」と言っていたほどである。

 

ところが約5年前の医学部の同窓会では、全く喫煙者がいなかった。2次会では灰皿を全て店員さんに下げて貰ったほどである。それくらい過去に喫煙していた同級生も禁煙していたのである。医師なら当然だろうと思うかもしれないが、凄いことである。

 

そう思う理由は、精神病院の院長会ではホテルの喫煙スペースで喫煙している院長先生もいるからである。それどころか他県から来ている演者も混じって喫煙しているほどである。他科に比べ精神科医は明らかに喫煙者が多い。

 

当時、女子医学生もそこそこ喫煙者がいたほどで(40%くらい)、医学生や医師が喫煙することに対し今ほど批判はされない時代だった。夕方からの精神科医局の抄読会なんて、タバコの毒ガスで壁が曇って見えるほどであった。それが普通の時代だったのである。余談だが当時、タバコスパスパの女子学生の方が卒後やりあげている。(仕事で業績を残しているという意味)

 

内科医の友人は、COPDの患者さんに喫煙を指導するのに、自分が吸うわけにはいかないと思い、喫煙を決断したという。

 

なんだかんだ同級生は喫煙の意思が強いと思った。僕は入学した当時、喫煙の練習はしたが、結局は馴染めず喫煙者になれなかった。そういう理由で、喫煙者が禁煙にどのくらい苦しむのかははよくわからない。

 

後年、僕は肺が弱い家系であることが判明し、今は喫煙しなくて良かったと思っている。その理由で、新型コロナワクチンも受けざるを得なかった。もし重い経過になりCOPD類似の後遺症が残ったら大変なことである。僕の肺は、一度は精密検査を受けるべきと思っているが、何しろ自覚症状がない上、SPO2も正常なので今のところ何もしていない。

 

新型コロナが流行り始めた年、2020年の春頃、一度新型コロナの疑いで検査に行ったところ、医師から以前、肺の大病をしたことがないか詳細に病歴を聴かれた。普通のレントゲン検査ではわからないが、MRIでは何らかの器質性変化が出ているようなのである。

 

僕の同期の卒業生は今のところ、在学時も含め1名も死亡者がいない。これは自殺者も1名もいないことも示している。これも結構凄いことである。

 

なんだかんだヒトはメンテナンスさえすれば長く生きられる仕様になっている。実際、全ての生物でヒトより長生きする生物はいないわけではないが、桁違いに長生きする生物だと思う。

 

ところがである。精神科の同門では、僕より後輩がそこそこ亡くなっている。おそらく一般人口より死亡率が高いのではないかと。死因は癌や脳卒中などの重い身体病が多いが、自殺もないわけではない。精神科医は統計的には自殺が多い科に挙げられている。

 

特にコロナが流行り始めて以降が多い印象だが、直接新型コロナで亡くなった人はいない。新型コロナ流行下では、生活の中でイベントが少ないので、より強く感じるのかもしれない。

 

精神科通院患者さんは喫煙率が高いが、精神科医の喫煙率が高いことのバックボーンは、精神科医に自殺者が相対的に多いことと同じである。単純に喫煙に対する強い意志が足りないとかでは済まない。

 

さてタイトルに挙げた精神科病院入院時に喫煙ができるかどうかは、病院による。病院により病棟内は禁煙だが喫煙スペースが設けられている病院と、全館禁煙の病院がある。今は大抵の病院は病室、共有スペース、廊下で喫煙できない病院が多いと思うが、裁量を持たせている病院もあると言ったところである。またそのことがホームページに記載されている病院と明確に記載されていない病院がある。

 

ホームページに病棟内喫煙の可否が記載されてない理由は、もし記載すると、患者さんが初診するのを避けるのではないか?という懸念があるからかもしれない。少なくとも、僕はそう思っている。

 

全館禁煙になり、院内に喫煙スペースもない場合、誰にもタバコ臭がないことになる。この環境だと、ほとんどの人が禁煙に慣れるものだ。周りが吸わず、またタバコの臭いもしない環境は禁煙のサポートになる。

 

今年、毎日40本吸っている患者さんが入院したが、最初はガタガタ文句を言っていたが、やがて慣れた。最初の頃は家族に禁煙ガムを差し入れして貰った。

 

精神科で全館禁煙にすると、薬が効きやすくなるので治療的にも良い。例えばジプレキサ(オランザピン)は、喫煙により効果がかなり下がると言われている。また、火事の心配が減るのも良い。タバコは火事の原因の1位だからである。

 

 

全館禁煙の時代に、新型コロナパンデミックが影響したことの1つは簡単に外出できなくなったことである。患者さんが買い物などの理由で外出を希望する際、本当は実はこっそり喫煙したいということがあった。コンビニなどに行き喫煙するのである。しかし、精神科患者さんはタバコを吸うと一般の人に比べ強烈なタバコ臭を放つ人がおり、外で1本吸ってもエレベータなどに臭いが残ってバレてしまうのである。当院ではこれは退院要件であった。(過去形)

 

新型コロナパンデミック下だと、ちょっと外出してタバコを吸うことができない。

 

そのため、どうしても禁煙に耐えられない人が出てくる。昔は1年に1名くらい喫煙したいために転院する患者さんがいたが、近年は5年に1名くらいである。この程度に減った理由は、一般病院の敷地内禁煙が普及したことが大きい。今は単科精神科病院でも院内禁煙はおかしいなどという人がいなくなった。これは非常に助かることである。

 

タバコが精神科の薬物療法にマイナスになる以上、入院時に禁煙するのは自然である。

 

精神科に入院して喫煙するなんて、自分の治療に対する真剣さが足りないと思う。