新型コロナにまつわる不思議な話、感応精神病的な発熱 | kyupinの日記 気が向けば更新

新型コロナにまつわる不思議な話、感応精神病的な発熱

統合失調症の人と妊娠の話は、過去ログで一度、記載したことがあるが、どうしても見つけられない。覚えている範囲でもう一度、記載する。以下はあらすじである。

 

ある統合失調症の女性患者さんが妊娠したと言い始めた。もはや妊娠は難しい年齢である。当時(30年くらい前)で40歳くらいだったと思う。すると次第にお腹が膨らみ始めた。また、不思議なことに、同室の別の女性患者さんも妊娠したと言い始め、その人もお腹が膨らみ始めたのである。

 

そして、2人とも臨月まで本当に妊娠しているようにお腹が大きくなり、幻の出産と同時にお腹が正常に戻ったのである。その記事では、「多分、お腹に入っていたのは空気だったのではないか?」と記載していたと思う。彼女たちの体重など増えていなかったからである。

 

このエピソードには興味深い点が2つある。1つは、妄想が身体に影響しその形状を変えていること。これは醜形恐怖的な違和感がそのまま身体に出てくることなど、日常臨床でも時々診る。

 

過去ログでは、右側の頬が膨らんでいると強く訴えるASDの患者さんの頬を良く診ると、確かに少し膨らんでいるように見えると言った記事がある。一般的な知覚とは順序が逆になっているのである。逆という意味だが、普通は頬が腫れてそれに気付くが、醜形恐怖的違和感が、身体に影響して実際にそうなっていることを言っている。

 

もう1つは、ある女性患者さんの「妊娠している」しているという妄想が、他の患者さんに伝染している?ことである。これは感応精神病的な現象だと思う。以下は、ウキペディアの記事である。

 

 

うちの病院である高齢の患者さんは、他の女性患者さんの妄想を取り入れてしまい、全く同じ妄想を抱くに至った。彼女は統合失調症ではないのである。「ヤクザが病院の近くに来て、自分を狙っている」などのような荒唐無稽な妄想である。

 

今回、その病棟で新型コロナのクラスターが起こったが、前回の他病棟のクラスター(1月)に比べて感染率が低く、感染者数も多くはなかった。

 

そのあたかも感応精神病のように妄想を抱く高齢の女性患者さんは、37.5~38℃の発熱が度々出て、その都度、新型コロナの抗原検査を実施したが、いつもマイナスなのである。一応、PCR検査も実施したが、やはりマイナスであった。そのうち病棟内のクラスターが終息すると平熱に戻った。

 

感応精神病的な妄想を抱く人は、このような時も実態がない自律神経症状(つまり発熱)が生じやすいのであろう。

 

注意してニュースを観察していると、さまざまな場面で、感応精神病的な現象に遭遇する。例えば古くはパトリシア・ハースト事件。この話は洗脳として語られることが多いが、感応精神病的な要素がある。

 

 

新型コロナウィルスのワクチンについても、どうみてもエビデンスがない荒唐無稽な物語(陰謀論のような妄想的なもの)を家族全員で共有していることがある。

 

家族でない場合も、SNSで同じような考えを持つ人が集まり、語りあっている場面も時々目撃する。

 

それらの荒唐無稽さ(陰謀論的文脈がある)が極めて妄想的であったとしても、統合失調症の妄想とは異なっている。そう思う理由は、妄想的思考があったとしても、仕事を普通にしているなど日常生活が保たれているからである。

 

今回の新型コロナパンデミックは、図らずも、いかに多くの人たちがエビデンスに基づく合理的な判断ができないかを示してくれていると思う。

 

しかも興味深いことに、それらは必ずしもインテリジェンスでは決まらないのである。

 

言い換えると、インテリジェンスが高いほどより合理的な判断を下せる、とは言えないようなのである。

 

参考